小出力発電設備について4月1日から事故報告が義務付けられた。対象は10~50キロワット未満の太陽光発電と20キロワット未満の風力発電。安全・安心な再生エネルギーの普及のためには当然の対応といえるだろう。

 2012年7月に施行された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再エネルギー特措法)以降、太陽光発電を中心に再エネ発電の設置件数が増加している。その一方で発電を巡るトラブルが社会問題化。台風の突風で太陽電池モジュールが吹き飛ばされるなど、深刻な事例が多数報告されている。今回の義務化は、事故原因究明や再発防止に必要な情報を収集するのが目的という。このため導入件数の多い小出力発電設備を報告制度の対象に加えた。

 事故の報告内容は「感電などによる死傷事故」「電気火災事故」「他の物件への損傷事故」「主要電気工作物の破損事故」の4項目。また大雨や洪水による設備の浸水、落雷や強風による風力発電のブレード破損なども対象になる。例えば飛来物が太陽電池モジュールに衝突し、半壊以上(20%以上)破損した場合は事故報告の対象とした。また強風の際に半壊未満のモジュールが敷地外に飛散した場合も、他の物件への損傷事故に該当するとした。

 東日本大震災による原発事故を例に出すまでもなく、エネルギーインフラの安全性は何にもまして重要だ。規模の異なる小出力発電設備についても、もちろん例外ではない。

 とくに主力電源化を目指す太陽光発電業界にとっては、小さな事故でも率先して報告する姿勢を示すべきだろう。太陽光発電協会(JPEA)の報告によると、11年から17年の間に太陽電池モジュール、またはケーブルから発生した事故は合計13件あった。累計導入件数に対して発生比率は100万件に1件程度に止まっている。ただし太陽電池自体の安全性は高いといっても、事故の発生件数ゼロを目指すにはモジュールメーカーの取り組みが欠かせない。防風による飛散防止対策のさらなる徹底など、設置業者や運営業者も含め、業界挙げての対応強化が求められている。

 事故報告制度では、報告を行った個人名が明かされることはないが、事故の概要を公表することはあるという。ただ再エネ設備の所有者には、どんな些細な事故でも公表し、自らの手で真摯に事例の検証を進めてもらいたい。迅速で透明性のある対応こそが地域住民の信頼を勝ち取るはずだ。クリーンな電力の普及に向け、所有者のクリーンな運営が問われる。

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