総合商社が国内で再生PET樹脂事業に力を注いでいる。各社ともPETボトルリサイクルのノウハウを持つ専業企業と組んで、現在処理能力が限られている西日本地域に大型の再生PET樹脂工場を立ち上げる予定だ。対象としているのは自動販売機などから排出される事業系の使い捨てPETボトル。これらを回収して選別・粉砕・洗浄し、飲料ボトルや食品容器向けのPET樹脂を製造。飲料メーカーなどの需要家に供給していく計画だ。

 豊田通商はウツミリサイクルシステムズ、中央倉庫などと共同で新会社「豊通ペットリサイクルシステムズ」(滋賀県蒲生郡日野町)を設立。2022年4月にも新会社が年4万トン(ボトル本数で20億本)の生産能力を有する工場を稼働させる。

 伊藤忠商事子会社の伊藤忠プラスチックスは、三重県の協力会社に最新設備を無償貸与し、再生PET樹脂を製造する。まずは家庭から排出され、市町村が収集する容器包装リサイクル法に基づく使い捨てPETボトルを原料として活用するが、将来的には事業系の使い捨てPETボトルも対象にする。25年度までに年1万6000トンの再生PET樹脂の販売を目指す。

 三井物産は仏ヴェオリア、セブン&アイ・ホールディングスと、合弁会社設立に向けて契約を締結した。合弁会社で西日本に工場を新設し、22年中の稼働を予定。年約2・5万トンの再生PET樹脂を生産していく。

 三菱商事もウツミリサイクルシステムズと組み、国内で再生PET樹脂事業をスタートさせる。子会社の三菱商事プラスチックが最新設備を貸与し、ウツミリサイクルが新設した製造子会社のURSハリマ(兵庫県高砂市)で年4万トンの再生PET樹脂を製造する。新工場の稼働は21年半ば予定している。

 総合商社が国内の再生PET樹脂事業に相次いで参入・再参入する背景には、原料供給サイド、需要サイドに大きなニーズが生まれていることが背景にある。来年1月からバーゼル法が強化され、リサイクルに適さない汚れた使い捨てプラスチックの輸出入が禁止される。そのため、これまで東南アジアなどに輸出されてきた事業系使い捨てPETボトル約30万トンが行き場を失い、国内で滞留すると見込まれている。ブランドオーナーなど需要家も、サステナビリティの観点から再生素材への切り替えを急ピッチで進めている。こうした原料供給サイドと需要サイドをうまくつなげ、環境配慮型ビジネスを創出することが今、総合商社の化学品部門が社会から求められている役割の一つといえよう。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る