コロナ禍によって厳しい外国人入国規制が敷かれていた日本で、ようやく緩和の動きが速まってきた。先進7カ国(G7)で最も厳しい水際対策は、日本のグローバル化を支えるであろう海外留学生の入国足止めにもつながっている。少子高齢化のなか、将来的な労働者不足の解消は喫緊の課題であり、外国人材の受け入れ拡大には、よりスピード感が求められる。

 政府は1日当たり入国者数の上限を3月に3500人から5000人に引き上げて以降、段階的に増やしてきた。さらに、きょう9月7日からは現行の2万人を5万人に引き上げる。

 加えて、海外渡航時に義務としていた日本帰国72時間以内の新型コロナウイルス検査およびチェックイン時の陰性証明提示について、ワクチン接種完了を条件に免除。また感染低リスク国からの帰国・入国はワクチン接種の有無に関係なく入国時検査と自主待機が免除される。これにより海外旅行客などの拡大につながることが期待される。

 とくに中小企業や小規模事業者を中心に人手不足が深刻だ。この解消を目的に2019年に在留資格「特定技能制度」が導入され、それまで高度な専門職でしか外国人労働者を受け入れることができなかったものが、介護や建設、宿泊、外食業をはじめとする分野で受け入れが可能となっている。さらに政府は外国人の受け入れ枠について、新型コロナの影響を踏まえ外食や宿泊業を縮小する一方、冷凍食品や総菜を作る飲食料品製造業などでは拡大する方針という。必要な分野へのテコ入れを期待したい。

 留学生の受け入れについても制限の緩和が急がれる。米国や英国などと異なり、厳しい制限を続けている日本に対し各地で批判が起きている。足止めされた留学生が他国に流れるケースもあるなど、日本企業に就職する可能性がある優秀な外国人を失う懸念もある。日本に興味を持つ企業や人材をつなぎ止めるためにも的確な対応を早急に打つべきである。

 企業の中には、円安も背景に、外国人実習生の受け入れについて応募者集めが難しくなっているとの声もある。入国の水際対策の緩和が進み、海外の企業が日本に対して長期的に信頼できるパートナーに値するとの確信が高まっていけば、積極的な投資にもつながることが期待できる。

 感染状況が高止まりするなか将来的な方向性を示すのは難しい。大幅な緩和策をとることで感染が拡大した際のリスクは当然ある。だが、新たな段階へ進む諸外国に後れをとらないよう迅速な対応が望まれる。

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