国内の石油化学拠点においてグリーン化を目指す動きが加速している。三井化学と三菱ケミカルは今月、それぞれ廃プラスチックなどから石油化学原料を得るケミカルリサイクル技術の導入について発表した。住友化学は、新研究棟を建設する千葉地区を環境負荷低減技術の開発拠点と位置づけ、ケミカルリサイクルなどを含む技術開発を加速する考え。2050年のカーボンニュートラル実現や循環型社会の確立には、石化拠点のグリーン化が不可欠。資金力や体力のある大手が先行して石化産業の刷新に着手し始めている。

 三井化学は、BASFジャパンとケミカルリサイクルの推進に向けた協議検討を開始した。両社が協力して日本におけるケミカルリサイクルの社会実装を目指すもので、関係省庁や業界団体などとも協議を進める考え。三井化学は日本で初めて、大阪のナフサクラッカー(エチレン設備)にフィンランドのネステ社から購入するバイオマスナフサを投入することもアナウンスしている。

 いち早くケミカルリサイクル技術の開発に着手した住友化学も今月、千葉地区をカーボンニュートラル実現に向けた研究開発拠点に位置づけ、新研究棟を建設すると発表した。リサイクルを含めた環境負荷低減技術や、社会課題の解決に資する新素材の開発などに取り組む。岩田圭一社長は、50年時点においても「日本の石油化学は絶対必要」と語り、環境負荷低減技術の開発に強い意欲を示している。

 三菱ケミカルは16日に、英ムラ・テクノロジーからケミカルリサイクル技術のライセンスを受けると発表した。同技術により、廃プラスチックから石油由来と同等の品質の重油やナフサ相当の留分が得られ、それを既存設備に直接投入できるという。三菱ケミカルは鹿島地区で、ENEOSと共同出資の有限責任事業組合において、石油精製・石油化学の連携強化策を検討中だが、ケミカルリサイクル技術の導入も含まれている。

 化石資源を大量消費し、CO2を大量に排出、またプラスチック問題も抱える日本の石化産業。生き残るには今後30年足らずの間に、その姿を一変させる必要がある。再生可能エネルギーを動力源に、排出されるCO2を捕捉・利活用し、プラスチック廃棄物はマテリアル・ケミカルの両リサイクルを駆使して原料化する。そんなクリーンで循環型の社会インフラとして生まれ変われるのか。時間、コスト、技術など、すべてハードルが高く、通常は無理とも思える大変革だ。しかし各社はそこを目指し走り始めた。熱いエールを送りたい。

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