複数の化学品商社が今年度から新たな中期経営計画をスタートさせた。各社の前年度業績は、コロナ禍を受けながらも堅調に推移しているケースが多く、過去最高の利益を上げた企業もあるほど。新中計は新ビジネスの育成が重要な課題となっているが、これまで種まきを行ってきた事業が業績に貢献し始め、前年度の高収益につながったというところもある。

 各社の新中計の概要を見ると、長瀬産業の新中計「ACE 2・0」は前中計の「収益構造の変革」「企業風土の変革」を踏襲しつつ、これを支える機能としてDX(デジタルトランスフォーメーション)のさらなる加速、サステナビリティ推進、コーポレート機能強化を掲げている。顧客が認識していない課題を見つけ出し、利益を生み出す解決策を提供するとの考えの下で「持続可能な事業の創出」に力を注ぐ。その事業領域として環境・エネルギー、次世代通信関連、ライフ&ヘルスケアの3分野を設定した。

 また稲畑産業は新中計「New Challenge 2023」で、前中計の達成状況と足元の経営環境の変化を踏まえ、内容を一部見直した。重点施策「主力ビジネスのさらなる深掘りと成長分野への横展開」では、情報電子で中国市場の液晶・有機ELビジネス、新世代FPDなどに関連するビジネスを強化。「将来の成長が見込める市場への多面的な取り組みと確実な収益化」では、情報電子、合成樹脂、化学品は環境負荷低減商材を拡充し、新エネルギー、5G、車載・モビリティ関連ビジネスを多面的に展開する。

 昭和興産の中計「SK-CHALLENGE8」は、海外関連ビジネスの強化と既存事業基盤の強化、成長分野への挑戦が柱。成長分野への挑戦では環境関連、情報・通信、メディカル・ヘルスケア、国内インフラ、モビリティの5つを重点に据えた。

 田中藍は、7月から開始した新中計で環境を意識したビジネスを強化する。グリーンケミストリーをテーマに化学メーカーなどと連携し新ビジネスの種まきを実施、農業関連分野へも進出し事業ポートフォリオを再構築する。九州で2019年から農業ビジネスを展開しており、廃液を回収・浄化し顧客に戻すリサイクルビジネスも始めた。

 各社が重点分野として多く挙げているのが電子材料、ライフサイエンス、環境関連。サステナビリティ経営を重視する最近の企業姿勢を背景として、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標に関連するビジネスを育成しようという試みも目立ち、今後の取り組みが注目される。

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