中堅の化学品商社が製造機能の強化を進めている。以前から取り組んでいる企業のなかには、すでに重要な事業の柱となって収益に大きく貢献しているものも少なくない。このような動きが活発化しているのは、過去から連綿と続いてきた口銭ビジネスだけでは、将来に向けた成長が困難になっていることが背景にあるといえる。

 各社とも収益向上に向け、さまざまな方策を打ち出している。電機・電子や医薬、環境などに関連する、利益率が高い商材を国内外から調達・販売しているほか、海外市場の開拓を加速。製造機能の強化も、その一手だ。ただ、ある中堅化学品商社の経営者に聞いたところ「製造にかかわることで得られる利益は、従来からの商社ビジネスよりも規模が大きい」という。

 専門商社が実際に製造機能を確保、あるいは拡大するには、グループ企業の活用のほか、協力会社への委託製造、国内外企業との事業提携やベンチャー企業への投資、M&A(合併・買収)など、さまざまなやり方がある。メーカー系商社であれば、グループのメーカーからの協力も得られるだろう。

 製造機能で高い実績を上げている一社がCBCだ。国内外で展開するマニュファクチャリング事業では、自動車部品、光学、農薬、医薬の4業種とも好調が続く。グループ会社の伊プロコスでは、医薬品原薬・中間体の受託合成、抗がん剤向け高薬理活性物質ともに需要が拡大、設備増強が相次いでいる。

 また森六ホールディングス傘下の森六ケミカルズはこのほど、ものづくり事業推進室を新設した。ものづくり機能の強化で、付加価値の高いソリューションの提供を目指す。グループの製造子会社と連携を強化、顧客との距離を縮めマーケットインの技術開発を加速していくという。

 三井化学ファインは、商社ビジネスに加え、製造委託先を50社近く確保し、ファブレスメーカーとしての活動も行っている。今後は顧客が世界各国に進出し事業展開を図る状況において、世界規模で生産機能の拡充を進める考えだという。

 中堅の化学品商社にとって製造機能の確保は、一朝一夕に実現できるものではない。高度な経営判断や資金、知見、アイデア、ノウハウなどが必要になる。しかし、これを確保できれば、グローバルに展開している商社機能と連動させて、ビジネスの領域を大きく広げることが可能になるだろう。専門商社が新たな収益源を確保するための戦略の一つとして力を入れている製造機能の強化-。今後の動きに注目したい。

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