地球環境保全や持続可能な社会の実現などに対する国民の意識が高まっている。ただし関心を集めるのにプラスチック製のレジ袋やスプーン、フォークなどを環境負荷の諸悪の根源のごとく取り上げるのは受け入れ難い。とはいえ2020年7月にレジ袋の有料化が義務化されるなど脱プラの動きは加速している。この流れはプラスチック業界にとって向かい風だが、商機をつかもうと帆を張り、前進している企業もある。

 大阪府東大阪市に本店を構える日榮新化は、その一社。得意とする粘着コーティング技術を生かし、商品の容器などに貼られるラベルやシートの台紙を従来の使い捨て剥離紙から、回収・リサイクルが可能な専用剥離PETフィルムに置き換えようとする取り組みを推進している。

 同社の調べでは、ラベルおよびシートの台紙に使われている素材の95%以上が剥離紙という。ラベル、シートを剥がしやすいよう剥離紙にはシリコーンやポリエチレン(PE)が塗布されているが、剥離紙とシリコーン、PEを分離するのは困難。商品の風袋などにラベルやシールを貼付した後に残る剥離紙は、一般的に産業廃棄物として焼却処分されている。

 プラスチックと同様、紙も貴重な資源。木材の消費量を減らし、フィルムの粗原料である原油の使用量を最小限に抑え、ごみ減量化につなげられないかと考えているうちに「循環型プロジェクト」の着想を得た。

 同プロジェクトは、使用済みプラスチックフィルム製台紙を回収、リサイクルし、再び剥離フィルムによみがえらせるもので19年に始動した。PETフィルムの表面にシリコーン、裏面に帯電防止剤をコーティングした専用剥離フィルムを開発するとともに、同フィルムの回収・リサイクルシステムの確立にめどがつき、本格的に普及活動に乗り出した。

 同社単独の取り組みではプロジェクトが広がっていかないことから、賛同してくれる原材料メーカー、印刷会社、商社、運送会社などと協力しながら仕組みを作り上げる。22年4月1日に施行される予定の「プラスチック資源循環促進法」を見据え、事業開始の準備を進めている。

 日榮新化が社会実装を目指す循環型プロジェクトのように、プラスチックの特性、強みを生かして環境貢献と経済成長を両立させられるテーマは、まだまだあるはずだ。プラスチックは社会課題を解決する可能性を大いに秘めている。常識を疑い知恵を絞り、材料転換を果たすなど、プラスチックのさらなる活躍が期待される。

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