「多様な働き方」「ワークライフバランス」や、国籍や性別、宗教などに関わらず多様な人々の活躍の場を広げる「広域ダイバーシティ」-。ユニバーサルな人材活用と社会への柔軟な適応が、グローバルベースで強く求められ始めた。とくに少子高齢化の加速、全体市場・社会規模のシュリンクが避けられない日本は、どう対応していけばよいか。現在、企業をリタイアした高齢者層の再雇用・社会活用が重要政策として取り組まれている。加えて外国人労働者に対する長期受け入れ、雇用業種の拡大が必須だ。人口構成で若年層から中堅層を厚くする意味も大きい。まずは政府に、しっかりした制度・体制づくりを求めたい。

 一方で地域連携の取り組みもカギを握る。中部地域・愛知県の主要産業団体の一つ、愛知県経営者協会(会長・大島卓日本ガイシ会長)が6月に発表した2024年度までの中期活動計画が、当地の行政機関・産業界から注目を集めている。計画では「わが国の産業・労働・雇用分野の状況が明確な変革期にある」と明言し「多様な価値観・新しい生活様式に順応する働き方の見直しと整備」を重要提言に掲げた。

 また「DX(デジタルトランスフォーメーション)導入拡大」「働き方改革推進」に次ぐ重要課題として「労働参加率の上昇(多様な人材)」を挙げ、外国人の雇用労働環境改善、外国人家族の日本語学習支援の仕組みづくりに取り組むとした。障害者雇用でも、会員企業を対象に障害者団体(特別支援学校・就労支援団体)とのマッチング支援を打ち出すなど、まず地域と連携を図るかたちで具体的な施策を推進するという。

 中部経済産業局が昨年公開した中部経済全体概況のなかに、愛知・岐阜・三重3県の製造業への外国人就業者数の割合が示されている。教育・学習、宿泊・飲食サービス、小売・店舗、情報通信系、その他製造業というカテゴリーのうち、製造業における外国人就業者の割合は約50%だった。全国平均は28%となっており「中部は製造業に従事する外国人が非常に多い」(中部経済産業局)。

 愛知県経営者協会が中期活動計画において、外国人就業者に対するさらなる体制整備を挙げたのも、課題解決が中部経済圏の一層の底上げにつながるとの見立てだろう。一部企業で、外国人従業員の家族・子供を対象に、日本語や社会ルールを学んでもらう活動も始まった。「霞が関」が仕切る大枠の法整備も大事だが、地域社会や自治体・団体の草の根の取り組みこそ、次代の、真の雇用多様化につながるのではないだろうか。

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