2050年までのカーボンニュートラル(CN)実現に向け、さまざまな業界で対応を探る動きが広がっている。新たな取り組みを打ち出したのが塩ビ工業・環境協会(VEC)だ。塩化ビニル樹脂の業界団体であるにもかかわらず「建築物の運用時におけるカーボンニュートラル検討委員会」を設置し、昨年11月30日に第1回会合を開催。建築物における省エネルギー化を促進するための取り組みをスタートさせている。

 具体的には、熱の出入りの大きい建築部材(窓などの開口部材)を中心に空調設備、照明設備、給湯設備、断熱材などの従来型の省エネ技術に加えて開口部の自動制御、各種設備の運転方法などを高度化し、自然エネルギー(創エネ)を活用した住宅を、いかにZEH(ネットゼロエネルギー住宅)に近づけるかを検討する。これらの住宅で快適性・健康を維持するための室内環境も課題となる。検討委は学識経験者や住宅建材メーカー、関係省庁の関係者らで構成。CN住宅およびCN建築物(老健施設など)の構築に向けた仕様、エネルギー使用量のシミュレーションなどについて24年3月をめどに検討結果を取りまとめる。

 VECは、言うまでもなく塩ビ樹脂やモノマーメーカー各社を会員会社とする塩ビの業界団体であり、実際に住宅建材を製造するのは樹脂の加工会社。しかしながら今回の検討委では、ブラインドやシャッターの自動制御技術の高度化などによって、効果的な遮熱や日射を取得することも視野に入れる。素材の業界団体がZEHやZEB(ネットゼロエネルギービル)の実現にかかわることを不思議に思う向きもあるかもしれない。

 ただVECは、協会の目的に「塩化ビニル工業に関する環境、安全に係わる諸問題の調査・研究及びその成果の普及を通じ、塩化ビニルに関する正しい理解を広める」「塩化ビニル工業に関する生産・技術・流通・消費等の調査・研究を行い、もって塩化ビニル工業の健全な発展に寄与する」の2つを掲げている。素材の団体であるからこそ、建材メーカーだけで取り組むよりまとまりやすい面もあるだろう。ひいては塩ビ建材の評価、業界の発展にもつながるはずだ。ブラインドなどでも塩ビ製品が貢献できる可能性がある。

 日本全体のCN実現には、建築分野での革新は避けては通れない。昨年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」でも、ZEH・ZEB水準の性能確保などがうたわれている。VECの働きかけが住宅・建築物業界の大きな成果に結びつくことを期待したい。

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