セラニーズは「サントプレーン」のブランドで知られるエクソンモービルの動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)事業を買収する。買収額は11億5000万ドル(約1275億円)。セラニーズにとって、エンジニアリングプラスチックを中心とするエンジニアード・マテリアルズ(EM)事業を新たな成長のステージに導く重要な案件である。

 ロリ・ライヤーカークCEO(最高経営責任者)は6月30日(米国時間)のオンライン会見で、自動車に関連するサントプレーンのポートフォリオはEM事業の幅が広がることに加え、医療や消費財などの分野で新たな用途が拓けると期待感を示した。

 セラニーズは2016年の伊SO.F.TER.(ソフター)グループの買収によってTPV市場に参入したが、エクソンモービルをはじめとする大手に比べて事業は小規模だった。今回の買収によって市場における圧倒的なポジションを確立する。同時にTPVの製品ラインを強固なものとし、既存製品との相乗効果によって成長の可能性を、さらに高められる。

 現有の生産拠点を生かして供給体制を強化する道も開ける。エクソンモービルの生産拠点は米フロリダ州ペンサコーラと英ウェールズ・ニューポートの2カ所で、年産能力は19万トンを上回る。EM事業を担当するトーマス・F・ケリー シニアバイスプレジデントはオンライン会見で、米国と英国のプラントに増産の余地があり、これによって引き続き事業を拡大できることに加え、必要に応じてセラニーズのイタリア、メキシコ、ブラジル、中国のコンパウンド拠点を活用してサントプレーンを供給できるとの考えを明らかにしている。

 アジアはサントプレーンの40%を占める重要市場だ。供給体制の現地化を進めるうえで、中国の資産を十分に生かすことが欠かせない。ケリー氏はオンライン会見で、比較的小規模の投資で現地生産に乗り出すことができると言及しており、今後は南京における生産が焦点の一つになるだろう。その際は、競争力のある原料のエチレンプロピレンゴム(EPDM)やポリプロピレン(PP)を安定して入手することが必須だ。

 20年のEM事業の売上高は約20億ドル。サントプレーンの17~20年実績と21年見通しのを平均すると年間の売上高は5億ドルと推定される。19年5月に就任したライヤーカークCEOは本紙との会見で「今後5~10年でEM事業の規模を2倍にしたい」との目標を語っている。買収により、この目標実現に向かう歩みがより確かなものになろう。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る