世界経済の回復が加速するとの見通しが強まっている。欧米を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいることや、バイデン政権による1兆9000億ドル(200兆円強)の追加経済対策の効果などが世界経済を押し上げるとみられるからだ。とくに製造業は、昨年後半から広範な用途で需要増が続いており、景況感が大きく持ち直している。化学各社の積極的な成長戦略に期待する。

 国際通貨基金(IMF)は今月、2021年の世界経済の実質GDP成長率を前年比6・0%増とする見通しを発表した。成長率は前回(1月)の見通しに対して0・5ポイントの上方修正となった。新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだ中国のほか、大型経済対策を打ち出した米国、ワクチン接種の進む先進国や一部の新興国などで、経済回復のスピードが速まると予想している。

 こうしたなかで新年度を迎えた化学各社トップの訓示は、コロナ禍で不透明感が強かった昨年と比較して力強さを増した。世界が大きな変曲点を迎えるなかで、変化をチャンスととらえて変革に挑み、打ち出した戦略を着実に遂行していく意志が強調されている。同時に、社会課題の解決に貢献しながら企業価値向上を図るという、化学産業の普遍的な使命を説きながら、自社の存在意義に自信を深める内容も多かった。

 ただし個々の企業にとっても化学産業全体としても、重要なのは変革のスピードだ。刻々と変化する社会や顧客の要求に応えるべく、革新的な技術やソリューションをいかに速く市場投入できるかが勝負となる。循環型社会、デジタル社会、健康長寿社会-。世界のトレンドは、いずれも化学産業の革新技術を待ち望んでいるが、最先端技術を世界の先頭に立って開発し続けていくには、それを実現するための基盤が必要となる。

 例えば昭和電工マテリアルズは、新世代の半導体パッケージを開発するためのコンソーシアム「ジョイント」の第2弾を年内にも設立し、半導体後工程における最先端の技術革新と材料開発を日本連合で実現する考えだ。また住友化学は、デジタルトランスフォーメーション(DX)による企業革新と人材育成を加速するため、アクセンチュアとの合弁会社「SUMIKA DX ACCENT」を設立した。同社の知見を活用し、ITとビジネスの融合を図る。

 自社の強みを生かしつつ他社との連携を進めるのは、世界の大変革の先頭を走るための基盤作りが目的。変革のスピードを加速する、これらの取り組みに注目したい。

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