大手専門商社で新組織の設置や再編が増えている。コロナ禍で企業経営環境が大きく変化し、さらに、これまでの化石燃料依存からの脱却など環境対応が求められる状況が背景にある。各企業が自社内およびグループ企業のリソースをより有効に活用していくため、部署間の垣根を取り払う格好で組織の再構築が推し進められているようだ。

 最近の動きでは、長瀬産業が4月1日付で2つの組織を新設した。「情報通信・エネルギー事業室」は、スマート社会の新たな情報通信・エネルギーインフラの実現に向けて、グループ力を駆使した製品開発機能を生かし技術や仕組みを提供する。もう一方の「NAGASEバイオテック室」では、グループが持つバイオテクノロジーを結集、ユニークな技術価値の提供と環境に配慮した高付加価値の新素材を開発し、持続可能な事業の創出を目指す。

 三井化学ファインは2020年に開設した「製商品管理課」の活動を今年から本格化するという。同社の製造委託先約50社を管理する役割を担う組織で、製造機能の効率化を狙いとしている。

 エア・ブラウンは6番目の事業部となる「ヒューベット事業部」を立ち上げた。同事業部は、これまで精密化学品や機能化学品で手がけていた事業の一部を再編・統合したもので、Human(人間)とVeterinary(家畜・獣医分野)をメイン領域として、不妊治療関連や畜産ブリーディング(人工授精)向けの商材を取り扱う。

 電機商社の八洲電機は、4月1日付で組織変更を行い、プラントエンジニアリングビジネスユニット(BU)を3本部体制へ移行した。鉄鋼業界へ特化した「プラントエンジニアリング第一本部」、石油業界へ特化した「同第二本部」に、新たに鉄・非鉄・ガス・化学を取り扱う「同第三本部」を加えた。

 医療機器商社のメディアスホールディングスは今年、子会社および孫会社のグループ再編を行う。循環器領域に特化した4社で再編と経営統合を行い、循環器領域での経営リソースを集約することで、効率的な事業運営体制の構築と、それぞれのノウハウの相互補完を狙う。

 組織再編や機構改革の理由は各社それぞれだが、従来の旧態依然とした縦割り組織では円滑に進まなかった各部署やグループ企業との連携が、このような組織の刷新によってより容易になったといえそうだ。自社およびグループ企業で横断的な連携を促すことで“化学反応”が起き、結果的に新しいビジネスの創造へ向けての近道となることが期待される。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る