大阪に本拠を構える企業が中分子医薬品に分類される核酸医薬品およびペプチド医薬品のCMO(受託製造)やCDMO(受託開発製造)事業の拡大に向け、攻勢をかけている。中分子医薬品は一般的な治療薬である低分子医薬品では狙えなかった標的を対象にでき、かつ副作用も少ないといった特徴を持つ。世界各国で臨床試験が実施され、商用薬として承認され始めており、増えていくことが必至だが、生産供給体制が十分でないのが現状。CMO、CDMOを手がける各社は成長力を取り込もうと、積極的に経営資源を投下している。

 そのなかで活発な動きをみせているのが大阪の企業。核酸医薬を合成するのに用いる固相担体から受託製造、そして製剤化までグループ全体で一貫して提供できる体制を整えている日東電工(大阪市)は2021年春、核酸医薬の治験薬、商用薬の増加に対応するため総額約250億円投じ、生産能力を引き上げることを決めた。固相担体の増産などに加え、米国子会社で、核酸医薬原薬CMO世界トップの日東電工アビシアで、商用薬製造用建屋、製造ラインを新設し、商用で必要となる量の核酸原薬を確保する。

 大阪では核酸医薬原料の受託製造も行われている。味の素グループのジーンデザイン(茨木市)は、大阪北部の彩都で核酸医薬の主成分であるオリゴ核酸の開発、製造を請け負う。2年半前には「核酸医薬API開発センター」が稼働し、日本で初めて1ロット当たりの生産量がキログラム単位に増大した。

 ペプチド原薬工場もある。ペプチスター(摂津市)が本社で特殊ペプチド原薬の研究開発、製造に励んでいる。ペプチド医薬原薬を伸ばしていくことはもちろん、核酸とペプチドを複合させる研究にも乗り出した。ペプチドは疾患の原因となる標的に特異的に結合する性質を有しており、薬効を発揮する核酸につなげることで届けたい個所に送達できる。少量製造用核酸合成装置を導入しており、成果を上げる。

 日本触媒(大阪市)は、核酸医薬を中心とする中分子医薬原薬受託製造事業の伸展に拍車を掛ける。吹田地区研究所(吹田市)内の中分子原薬製造施設で、初めてGMP製造による臨床試験用核酸医薬原薬を出荷し実績を挙げたことから、今春に営業活動を本格化した。特異なドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を保有する核酸医薬の創薬ベンチャーなどをグループに揃えることも強みだ。

 各社の取り組みが実り、医薬品業界において大阪の地位が、さらに向上していくことを期待したい。

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