太陽電池(PV)パネルの廃棄問題が取り沙汰されて久しい。リサイクル技術の確立が遅れ、埋め立て処分される現状を前に、SNS上などではPVそのものに対し否定的な意見が散見されている。

 使用ずみPVパネルを大量廃棄する時代は確実にやってくる。最大の要因は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にある。日本では2012年に施行され、この10年間で太陽光発電は20倍以上に増加した。PVパネルは耐用年数20~30年とされ、30年代半ばに廃棄の急増が確実視される。環境省の試算によると、15年の廃棄量2351トンが、40年には約80万トンまで拡大するという。廃棄パネルを敷き詰めると、東京ドーム約1700個分の広さになるとか。現状、ほとんどが埋め立て処分だが今後、処分場の容量が逼迫するとの見方が強まっている。

 しかしFITの施行当初から、この大量廃棄問題はPV業界では広く心配されていた課題でもある。PVメーカーを含め、関連団体が手をこまぬいていたわけではない。現に、さまざまなリサイクル技術が誕生し、今後普及しようとしている。

 例えば、太陽光発電装置を販売する新見ソーラーカンパニー(岡山県新見市)は、廃棄された太陽光パネルを熱分解する装置を開発した。PVパネルに使用するガラスやシリコンのPVセル、銅線といった原材料を分離抽出することが可能という。23年末には完成予定で、分離抽出した原材料を再活用し、新たなPVパネルに再生循環させる取り組みを推進していく。また欧州最大の応用研究機関である独フラウンホーファーは、使用ずみPVパネルから回収したシリコンを再利用して、新たなPVを製造する技術を開発。同技術を適用したPVセルは、実用化レベルの変換効率を達成しているという。

 さらに廃材を新たな用途に使う試みも行われている。産業技術総合研究所は、両面受光PV向けの反射材として使用ずみPVのガラスに着目。粒状に粉砕して地面に敷設すると、片面受光PVに比べて発電量が8~10%増加することを確認している。

 太陽光発電協会がPVパネルのリサイクルが可能な産業廃棄物中間処理業者の一覧を公表しているように、すでに適切な処理を行う業者は数多く存在する。現状の方法で大量廃棄問題に対応できないからといって、安易にPV普及の息吹を消してはならない。まだ時間は十分ある。業界の英知を集結し、新たなリサイクルの仕組みを作ることが重要だ。革新的な技術を基にした新たな循環型ビジネスモデルの創出を期待したい。

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