太陽光発電(PV)産業が2020年に入って新たな局面を迎えている。10年代は、言わば補助金による急拡大の時代。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を追い風に、世界有数のPV大国となった。そして優遇期間が終わった今は自立の時代に突入した。
 このPV産業の自立に向け、関連企業ではさまざまな手を講じ、さらなる普及拡大に乗り出している。代表的なものの一つが蓄電池と連携したエネルギーマネジメントシステム。これまでの売電中心から、自宅で生成した電力を自家消費するためのシステム提案が活発に行われている。また電気自動車(EV)との組み合わせは、災害対策にも役立つとして注目を集める。PVで充電したEVを“走る電池”と見立て、災害地域での電力供給を可能にするものだ。
 天候に左右されるPVは、大規模製造業の主力電源になり得ないとする見方が一般的だが、ある地域や建物などの特定電源としてならば十分に活用可能となる。そこで例えば、国内の縫製業などファッション関係とのコラボレーションを進めてみたらどうだろうか。
 アパレル業界では、いま「エシカル」が重要なキーワードとなっている。これは過酷な労働環境や売れ残った衣料品の大量破棄問題などの改善に加え、環境配慮型素材の使用など、いわゆる「良識にかなったファッション」を提供しようという取り組み。欧州を中心に始まったトレンドだ。今後、日本のアパレルも本格的に追随し、広く普及していくと予想される。
 日本繊維産業連盟(鎌原正直会長・三菱ケミカル特別顧問)は今年初に「2030年にあるべき繊維業界への提言」を公表した。そのなかでローワーミドルを中心とした展開から、アッパーミドル向けへと産業構造を変換する姿勢を強調した。とくに輸出によって成長を続ける国内の縫製業を有効活用することで、付加価値化を促す考えを示している。
 この縫製業の電力、つまりはミシンの動力源に蓄電池連携のPVシステムを活用できれば、従来の付加価値製品の提供に加えて、環境配慮をアピールできる。縫製業にとっては自家発電による経費削減効果も見込まれるほか、PV産業にとっても導入の間口が広がる。
 かつてないほど環境の重要性が問われ、その流れは今後も加速することが予想されている。PVは、まさに特定個所の電源に打って付けの存在だ。エシカルなモノづくりを支援するためにも、PV産業にはアパレルを含めた製造業と積極的にコラボを進めるよう期待したい。

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