太陽電池(PV)パネル1枚当たりの出力が2020年内にも500ワットに達しそうだ。中国の大手シリコン系PVメーカーが、こぞって今年末までに同出力の新製品を発売するという。今後、各社では主力製品に据える考えを打ち出している。
 12年7月に施行された再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を追い風に、国内のPV市場は爆発的拡大を遂げた。その当時のPVパネルの出力は300ワットほど。その後、年5~25ワットの出力アップを重ねながら、わずか8年で500ワット超えを実現した。
 ブレークスルーの要因としては、まずシリコンウエハーの大型化が挙げられる。サイズアップは発電量の増加につながる技術で、これまで15・6センチメートル角のセルが多く使用されていた。今後は21・0センチメートル角が主流になる見通しだ。またパワーロス軽減も欠かせないキーテクノロジーの一つ。正方形のセルを半分割するハーフセル技術は、発生した電力を効率良く集めることが可能。集電効率のさらなる改善に向け、大型化したセルを3分割したタイプの量産化が進むとみられている。これらの技術を組み合わせることで、PV大手では早期の600ワット超えも視野に入れているという。
 このPVパネルの出力向上は均等化発電原価(LCOE)に直結する。発電量当たりのコストを示すLCOEは、トータルの発電量が多くなれば、それだけ低下する。メガソーラー規模のPV発電所の平均的なLCOEは、10年の0・37が18年には0・085となるなど、この間に77%下がっている。化石燃料技術のLCOEは0・05~0・17と目されていることから、今後数年内に、PV発電所は化石燃料と比べても十分な競争力を持つこととなりそうだ。
 この「PV500ワット時代」は何を意味するのか。日本勢が存在感を発揮したFIT以前とは異なり、今では圧倒的な生産量によるコスト競争力で中国メーカーが世界を席巻している。上位5社のメーカーは現状、ほぼ落ち着いた格好にあり、今後は価格競争から性能やサービスを競う時代に突入すると予想されている。太陽光発電の主力電源化に向けても、この路線変更は歓迎すべき変化といえる。また信頼性の高いPVを廉価に調達することができれば、仮想発電所(VPP)や電気自動車(EV)の充電用途などの普及の後押しにもなる。
 「PVを作る時代から使いこなす時代へ」-。PVシステムを他のエネルギーシステムなどといかに連携させるかが、今後の国内PV産業のカギを握ることになりそうだ。

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