ソーラーフロンティアが汎用型太陽電池(PV)の生産から撤退した。最大の要因は中国勢の安価なPVが市場を席巻したこと。日本の1年間の総需要を超える量を1社で賄える中国メーカーが複数ある現状、事業構造転換はやむを得ない措置といえよう。

 2000年代初頭、日本のPVメーカーはトップを走っていた。シャープやパナソニック、京セラなどのパネルは世界中で人気を集め、当時新興の中国メーカーも、その動向を注視した。しかし10年代半ばには、ジンコソーラーやトリナ・ソーラーといった中国勢がコスト競争力を武器に世界で存在感を発揮。当初は見劣りした品質についても、PERC(セル裏面不動態化処理)を筆頭とした独自技術に磨きをかけ、変換効率の世界記録を次々塗り替えた。日本ではアフターサービスに不安を覚える消費者がいるものの、ソーラーフロンティアも海外メーカーからOEM(相手先ブランドによる生産)でシリコン系PVを調達するなど、今や信頼に足るメーカーへと変貌を遂げた。

 ソーラーフロンティアのPV生産撤退は、日系メーカーがPVを作る時代から「使いこなす時代」へ突入した象徴といえる。10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画(エネ基)にも記されているように、太陽光発電は「自家消費や地産地消を行う分散型エネルギーリソースとして、レジリエンスの観点でも活用が期待される」。ただPVが主要電源の一翼を担うには、さらなるコスト低減はもちろん「出力変動に対応するための調整力の確保」や「立地制約の克服に向け更なる技術革新が必要」となる。

 日系のPVメーカーには、長年の事業実績を生かし、研究・開発型のシステムインテグレーターへの進化を期待したい。ソーラーフロンティアが指摘するように、エネ基が目標として定める「100ギガワット超の発電設備を社会に実装していくために、これまで設置できなかった場所も開拓」することが不可欠。各種屋根への設置に最適な工法やカーポート、ビル壁面など、設置場所の拡大につながる技術開発に力を注ぐべきだろう。

 塗布型のペロブスカイトや多接合型といった次世代のPV開発にも期待したい。曲面への適用が可能な塗布型なら自動車への本格実装も夢ではない。また現存するPVで最も変換効率が高く、人工衛星などに使われる多接合PVが低コスト化できれば、適用個所の拡大にもつながる。

 開発技術は、ライセンスビジネスとしての展開も可能だろう。何よりカーボンニュートラル実現のため、PV技術の灯を消してはならない。

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