菅内閣が発足した。安倍内閣の継承を訴えていただけに、再任や横滑りが目立つが、もともと3人と少なかった女性閣僚は2人に減った。昨年1月時点で日本の閣僚に占める女性の割合は約16%で世界113位。現政権は閣僚ポストが1つ増えて20となり、女性比率は10%に下がった。調査時点に当てはめると148位にまで後退する。衆参合わせて710人いる国会議員のうち、女性は100人余りに過ぎない。ここに根本的な問題がある。
 女性の進出が進んでいないのは企業も同様。経済協力開発機構(OECD)によると、上場企業の女性役員の割合はOECD加盟国の平均が約26%であるのに対し日本は約8%で、下から3番目。管理職は平均32%に対し約15%にとどまる。
 国際労働機関(ILO)は、女性が指導的役割を担うことを阻む要因の筆頭に「女性が男性よりも家庭での責任が大きい」ことを挙げている。日本では、この傾向が顕著なようだ。内閣府の調査では、妻が家事に費やす時間は夫の2倍以上。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」とする考えに6割が反対しているにもかかわらず、実体がともなっていない。
 日本の中学校や高校で、家庭科の授業を男女ともに受けるようになったのは二十数年前に過ぎない。それまで女子生徒が家庭科を受けている間に、男子生徒は電気や機械など技術、あるいは体育を受けていた。40代以上の日本人は「家庭を守るのが女性の役割だ」と、学校から教えられてきたようなものだ。
 現在も日本には、希望しても保育所などには入れない「待機児童」が1万人以上もいる。政府は当初、2017年度までに解消するという目標を掲げていた。この例に限らず、日本で女性の社会進出を促す環境整備が進まない背景に今なお「家庭は女性が守るもの」という固定観念が払拭されていないことは疑いない。
 英国の広告業界では、性別の役割・特性のステレオタイプが子ども、若者、大人の選択、向上心、機会を制限する可能性があるとして、こうした表現を禁止している。散らかした部屋を掃除する責任が女性だけにあるように描いたものや、おむつを替えられない男性といった表現が対象になる。日本のメディアを改めて見直すと、ジェンダーに関する固定観念を再生産するものが少なくない。
 英国の会社における役員の女性比率は約33%、管理職では約36%とOECD加盟国平均を上回る。日本も、女性の社会進出を阻む意識の改革に、もっと積極的に取り組むべきだろう。

社説の最新記事もっと見る