新型コロナウイルス感染拡大に世界が揺れ動いており、内外の経済動向に関するニュースが相対的に影が薄い。上場企業の2019年4~12月期決算の発表が2月初旬から続いており、トヨタ自動車は6日にあった。前期に売上高で過去最高を更新し、日本の会社として初めて30兆円を突破した勢いは衰えてはいない。今4~12月期も売上高は過去最高の22兆8301億円を確保、販売台数も過去最高となる前年同期比約13万台増の683万台を記録した。自動車関連は足元では「トヨタの独り勝ち」の状況にある。
 アジアや中国における昨秋辺りからの景気減速によって自動車市場の落ち込みが懸念され、トヨタをはじめとする各社の4~12月期決算への悪影響が言われていた。ただアナリストなどの予想とは裏腹に、日本をはじめ北米や欧州での増販効果が予想以上だった。また中国でも高級車レクサスの販売は、今年1月初旬ごろまで好調を維持し、今回のトヨタの業績拡大につながった。
 ただ新型コロナウイルスの感染拡大が、世界の自動車市場をけん引してきた中国の社会に与える影響が懸念される。経済活動を含め平常化が大幅に遅れた場合、トヨタの高成長路線も、中国やアジアに対する戦略見直しや、中国生産の代替、材料を含む調達サプライチェーンの再構築などに迫られるだろう。今月6日の決算発表でトヨタの経営幹部は「新型肺炎の影響を含め、先の見通しが困難」とし、経済への影響が長期化するとの懸念も強調している。
 その一方で、豊田章男社長自ら陣頭指揮を取り、プロジェクトを進めてきたマツダとの資本提携も一定に完了。子会社化したダイハツ、提携関係にあるスバル、スズキなど、トヨタは自動車メーカー再編で中心的役割を果たしつつある。また静岡県裾野市にコネクテッドをキーテクノロジーとした未来都市を建設する計画を発表。業績好調を背景に本業の自動車でメーカー再編を促し、モビリティ企業への脱皮に向けて大胆な変革にも着手している。
 愛知県下でトヨタ関連企業とビジネスのある部材系代理店の社長は「(新型コロナの)影響は直近では避けられないが(コロナが)終息した後の反転拡大時にも備えなければ」と先の先を見据える。トヨタも当然、コロナ終息後のシナリオを想定済みだろう。企業にとって足元のコロナ対策は最重要事項だが、その代理店社長の言葉からは、トヨタが「多様な事業想定」に備えていることが読み取れる。これが好業績の維持と無縁ではないように感じられる。

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