団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」、人口の3分の1が65歳以上になることで起こる「2030年問題」-。少子高齢化が進む日本で労働力の確保は深刻な問題だ。人口減にともない労働力人口が減少するなか、増加傾向にある65歳以上を積極的に活用するほか、外国人労働者の受け入れ拡大は以前にも増して重要となる。ただ新型コロナウイルス変異株の発生によって海外との往来が再び制限されるなど、計画に狂いが生じることが予想される。現実を直視し、今後起こり得る課題に真剣に取り組む必要がある。

 人口減・少子高齢化にともない、我が国の労働者不足は以前から指摘されてきた。だが、2030年問題が引き起こす社会構造の変化は雇用や医療、社会保障に大きな影響を与えることは必至であり、従来システムからの大幅な変革が求められてくる。

 総務省が先月末公表した20年国勢調査の結果をみると、我が国の人口は前回調査の15年から0・7%減少し、1920年の調査開始以来初めてマイナスに転じた10~15年からの減少傾向が続いた。15~64歳の生産年齢人口の割合は15年調査の60・9%から59・5%に減少する一方、65歳以上は26・6%から28・6%に上昇している。将来を担う15歳未満の割合は世界で最も低く、反対に65歳以上の割合は世界で最も高い。再雇用義務化や定年延長の動きで労働人口は一定に保てるものの、将来的な不足は否めない。

 また15年に比べ日本人人口が1・4%減少する一方、外国人人口は83万5000人、43・6%増加した。労働人口の減少を考えると、やはり外国人労働者に頼る部分は大きくなる。変異株の登場により海外との行き来が再び遮断されたが、この先ウィズコロナのなかでは同様なケースは起こり得る。柔軟性を持った対応が必要だろう。

 この間の外出自粛のなか、企業はテレワークを推進するとともに効率化を追求してきた。感染者減少で街には人が溢れテレワークの割合も下がってきているが、当初予定より前倒しで取り組んだ働き方改革の流れを止めることはもったいない。業務効率化の一環として一層推し進めるべきであり、経営基盤の強化につなげてほしい。 

 デジタル化およびDX(デジタルトランスフォーメーション)の一層の促進は日本の成長に欠かせない。AI(人工知能)・ロボット技術の活用なども推し進め、業務効率化を図ることが企業の生き残りの条件となってくる。同時に、多様な働き方を享受しやすい環境の整備も必要不可欠なテーマである。

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