新型コロナウイルスの感染が広がり、さまざまな分野に影響を及ぼしている。医療や衛生用品、介護など直接的に関係がある業界のほか、緊急事態宣言によって外出が抑制されていることでダメージを受けた業界として旅行や観光、外食、イベント関連業界などが思い浮かぶ。

 その一方で需要が増えている分野も少なくない。キーワードは「巣ごもり需要」。テレワークの普及が進み、自宅で仕事ができる環境を整えるためのパソコンやタブレットに加えて、ウエブ会議あるいは顧客とのネットを利用した商談に必要となるウエブカメラ、イヤホンやWiFi関連装置など周辺機器の需要も旺盛だ。

 テレワークが当たり前のビジネス環境になれば、例えば都市部近くに住む必要がなくなり、比較的安価で敷地面積が広い郊外の戸建てに移住するケースが増えることも予測される。

 このような需要の拡大は白物家電にも広がっている。JEMA(日本電機工業会)がまとめた2020年1~12月の民生用機器の国内出荷(金額)をみると、前年比1・0%増の2兆5363億円で5年連続増加となった。今年1月単月でも前年同月に比べ20・7%増の1835億円と大きく伸長している。

 昨年は在宅時間の増加で調理家電製品が増加した。さらに健康・清潔意識の高まりもあって空気清浄機が増加、年間で初めて800億円を超え、過去最高の出荷額を記録している。またルームエアコンは、4~5月に新型コロナによる販売店の休業や営業時間短縮の影響を受けたが、特別定額給付金の後押しもあってデータが確認できる1972年以降、過去最高の出荷数量となった。

 「コロナだから」と外食をやめて自炊に切り替える場合などには「炊飯器やIHクッキングヒーターといった調理器具を新しくしたい」というニーズもあるだろう。在宅勤務が続くと部屋の汚れが気になるので高性能の掃除機が欲しくなり、手間がかからないロボット掃除機を購入するケースもあるようだ。このような状況から、今年も引き続き白物家電の好調が続くことが予想される。

 今後、ワクチンが潤沢に供給されるようになったとしても、日本および海外ともコロナ前の状況に戻ることは考えにくい。屋内で過ごす時間が長くなることで必然的に家電製品の販売量は増加するだろう。

 昨年支給された1人10万円の特定定額給付金で、白物家電製品を購入したという声も漏れ聞く。巣ごもりによる需要増によって販売が増え、日本経済伸長の一助となることを望む。

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