サプライチェーンの混乱は多くの企業の事業活動や業績に影響を及ぼしている。化学企業も例外ではなく、収益の主要な下押し要因になっている。米国化学工業協会(ACC)が先ごろまとめたレポートでも、こうした点が明確になった。

 2021年11月から12月にかけて67社のメーカーを対象に調査し、その結果を今月10日に発表した。レポートによれば、調査対象になった99%の企業の米国における生産活動は、サプライチェーンの混乱の影響を受けた。また3分の2の企業は生産減の要因になり、94%が出荷の遅れに、93%が輸送費の増加につながったと回答している。

 レポートでは、生産計画の変更を余儀なくされたり、原料の到着が予定より遅れたことを背景に、売り上げが減少したといった具体例も紹介されている。製品供給の遅延によって、顧客の生産活動に甚大な影響が出たケースにも触れている。

 サプライチェーンの混乱に起因するコストの増加幅はさまざまだが、4分の1の企業が100万~300万ドル(約1億1400万~3億4300万円)、3分の1以上が2000万ドル(22億9000万円)以上増えたという。

 またACCは、21年12月7日に22年の米国における化学品生産の見通しを発表した。生産量は前年より4・3%増え、サプライチェーンの混乱の影響は柔らぐとの内容で、マーサ・ムーア チーフエコノミストは「リスクは残るものの、22年に向けて米国の化学産業は強いポジションにある」とコメントしている。

 欧州でも傾向は似ている。欧州化学工業協会(CEFIC)は21年12月20日に発表したレポートで、欧州連合(EU)に加盟する27カ国の22年の化学品生産は、前年を2・5%上回るとの見通しを示した。一方でエネルギー価格の高騰とサプライチェーンの混乱は目先の懸念材料であり、成長の大きな下振れリスクと指摘している。

 欧米の化学企業は、1月下旬から21年第4四半期と通年の業績を相次いで発表する。シーカは21年の売上高が前年比17・3%増の92億4000万スイスフラン(約1兆1540億円)に達したことをいち早く発表した。同社は成功の要因を自社のビジネスモデルとする一方、原料調達がボトルネックになったと言及している。サプライチェーンの混乱の影響が無視できない規模であったことは明らかであり、多くの企業に共通する点であろう。ACCとCEFICのレポートによってリスクが少なくないことは改めてはっきりした。引き続き徹底したリスク管理が欠かせない。

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