自社が最も得意としている分野・製品に経営資源を積極投入しながら、市場で確固たる地位を築くことは重要な戦略の一つだ。決して市場規模が大きくなくとも、顧客の信頼を勝ち得ることができれば安定した収益を獲得できる。関西には得意分野での優位なポジションを生かし、その分野で一目置かれる企業が多く存在する。

 国内唯一のグリセリン専業メーカーである阪本薬品工業(大阪市中央区)は昨年末、同社泉北工場(大阪府泉大津市)でグリセリンの新製造設備の竣工式を行った。新設備の生産能力は年間2万トン規模で、同工場の生産能力を同3万5000トンに増強した。医薬品や食品、化粧品、各種工業用途における需要の増加に対応するのが狙い。

 同社は、植物油脂を原料として天然グリセリンを製造しており、国内トップのシェアを誇る。局方グレードをはじめ広範囲な用途に展開しており、需要が堅調に推移している。局方グレードの製品をより厳格に管理するため、今回の設備には多額の費用を投入することを決断した。同社はグリセリンから脂肪酸エステルなどの各種誘導体まで一貫製造しており、ここ数年、泉北工場のみならず、他の工場でも誘導体を含め設備投資を積極的に行っている。継続的な設備投資によって安定した品質および供給体制を構築することで、市場でのポジションを堅持する構えだ。

 建築分野やプラント分野などで、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム製品を展開する日本インシュレーション(大阪市中央区)は、不燃内装意匠材を増設した。耐熱性などに優れるゾノトライト系ケイ酸カルシウムを基材とした同材は、リブ・波形・モール・幾何学模様・デザインレリーフといった幅広いデザイン加工が行える。不燃材料のため内装制限が求められる部位にも使用可能で、商業施設、宿泊施設などの内装装飾材としてニーズが高まっている。2018年度下期には納期が6カ月程度先となるなど新規案件に応えることが難しくなり、19年度から同社北勢工場(三重県いなべ市)で増設計画を進めていた。設備の導入・調整などを経て今年2月に増産体制が整い、生産能力を従来比約25%引き上げた。

 経営資源が限られるなか、競争に勝ち残るためには自社の得意とする分野を選定し、その分野でナンバーワンになることが基本戦略となる。市場の変化をいち早く把握して先手を打つことができるうえに、むやみな価格競争に巻き込まれず、収益向上も期待できる。優位性のある経営資源の特徴を生かすことが安定した成長につながる。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

社説の最新記事もっと見る