化学研究評価機構(JCII)が、プラ製品の劣化や寿命に関する産学官連携プラットフォーム「劣化・寿命予測研究会」を立ち上げた。プラスチックの試験評価で豊富な実績を持つJCIIが課題を抱える事業者と解決策を有する研究機関とを橋渡しし、課題解決に資する知識や技術、データを提供していく。事業者が分からないこと、困ったことを聞ける場として、まず勉強会と相談会を始める。
 プラスチック劣化の要因は、光、熱、水分、大気、薬品、摩擦、衝撃などさまざまで、かつ複雑に絡み合っている。使用される場所や目的によって、品質管理や品質保証の考え方も異なる。ただ事業者が個別に劣化や寿命を予測するの難しい。国や大学などの研究機関、公設試験研究機関が持つ解析技術、試験装置、データの活用が不可欠となる。JCIIは事業者へのアンケートや訪問調査の結果を踏まえ、協働して対応できる課題があるとみて研究会を立ち上げた。
 来月、東京で第1回の勉強会「劣化についての基礎」を開き2020年度は6月、10月、21年2月に予定する。耐久性に関する世界唯一の学会であるマテリアルライフ学会が全面協力を約束しており、講師の派遣だけでなく、課題解決やトラブルシューティングのための個社相談会の開催、測定方法や新たな技術情報の紹介も行う。
 相談だけでなく、装置開発も含めて産業界が求める試験・評価方法を提供できる場とするため、勉強会を通じて劣化・寿命予測に関する知識や考え方を統一していくとともに、相談会で収集した課題を検証し、共通性のある課題はワーキンググループを設けて解決策を検討する方針。標準化できるものは、JCIIの事業として測定方法や装置開発を支援するという。
 サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行が社会的な命題となっている。あらゆるものを循環的に利用することで徹底的に資源や資産としての価値を使い切るのが循環経済の考え方とすれば、用途に応じた製品寿命を知ることは非常に重要だ。劣化の挙動を理解し、それを評価・予測する知識を身につける場を提供、かつ標準化しようとする研究会の意義は、社会的にも大きいだろう。
 昨年12月10日に都内で開かれた発足式で特別講演した大石不二夫神奈川大学名誉教授は、マイクロプラスチックの生成メカニズムの解明と対応策の提案、耐久性に関するビッグデータの集積と活用など、取り組みの方向性を提示した。研究会の発展を期待するとともに、多くの人に関心を持ってもらいたい。

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