まん延防止等重点措置が3月21日で全面解除された。その反映であろうか、内閣府が8日発表した3月の景気ウォッチャー調査は現状判断DIが47・8となり、前月比10・1ポイント増と3カ月ぶりの上昇となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが上昇した。また、2~3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは50・1となった。家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが上昇し前月を5・7ポイント上回った。内閣府は判断の表現を「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、ワクチン接種の進展等もあり、感染症の動向への懸念が和らぐなか、持ち直しへの期待がある一方、ウクライナ情勢による影響も含め、コスト上昇等に対する懸念がみられる」とした。明暗入り交じった表現といえよう。

 同日、財務省が発表した2月の国際収支状況(速報)によると、貿易収支は1768億円の赤字。4カ月連続の赤字となった。原油や液化天然ガスなど資源の高騰が続いていることや、新型コロナワクチンなど医薬品の輸入が増えたことが要因とみられる。

 さらに、ここに来て円安が輸入品の価格上昇に拍車をかけている。かつて円安は輸出企業にプラスに働くとされ、どちらかといえば歓迎されていた。しかし今は原材料などの輸入価格を押し上げ、悪性インフレを招きかねない状況となっている。日本も利上げすれば円高に振れるという考え方もあるが、国債の利払い負担が増えて財政が悪化するといったマイナス面があり、日銀や政府のかじ取りは難しい局面を迎えている。

 小麦や食用油の値上がりも報じられているが、界面活性剤の原料となるパーム油も、インドネシア輸出制限やウクライナのひまわり油の供給減少を背景に上昇が続く。

 さらに国際物流コストも上昇している。米国西海岸の滞船問題はいぜん続いており、2月の20フィートコンテナの横浜からロス港への輸送費(スポット)は前年同月の約3倍となった。ロシアへの経済制裁の影響で、ヨーロッパ向け航空貨物の輸送費はウクライナ侵攻前の1・5倍といわれる。輸送時間も通常なら12時間で到着するところが、ロシア上空を通れないため中東など経由し17時間ほどかかる。

 こうしたコスト上昇分を容易に価格に転嫁できないことから、企業経営は厳しい状況に置かれ始めている。当面は企業努力によって耐えるしかないのだろうが限界はある。この難局をどう乗り切るか、官民が一体となって考える時期を迎えている。

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