射出成形機を中心とするプラスチック加工機械メーカーが新しい戦略構築を急いでいる。近年、快走を続けてきた射出成形機市場だが、世界経済の失速を背景に2019年の生産は合計2ケタダウンの見込み。20年、本格的な需要回復が見込めないなか各社はアライアンス戦略を模索しており、次の一手も待たれよう。
 射出成形機は産業機械のなかで最も納期が短く、景気の善し悪しが迅速に表われると言う。またユーザー業界が日用品から食品・医薬をはじめ家電、自動車、情報電子機器などハイエンド領域まで全業種にわたるのも特徴。生産台数は約7割が輸出向けで、やはり各国の経済環境に大きく左右される。
 近年、射出成形機各社は、旺盛な新興国需要に支えられてフル操業を続けていた。しかし19年は米中貿易摩擦や新興国経済の低迷を背景に失速。1~10月までは前年同期比10・2%減の1万2742台の2ケタダウンと苦戦した。通年では1万5000台前後となりそう。
 厳しい市場環境下にあって、メーカー各社の19年度中間決算は、成形機事業をみると減収という結果が目立った。
 その一方、各社は次の成長に向けて新しい戦略の構築を急いでいる。専業大手の日精樹脂工業は今年1月、イタリアの射出成形機およびロボット機器メーカー、ネグリ・ボッシ社を買収する。型締力7000トンの超大型成形システムで強みがあり、需要増が続くロボット製造の子会社を持っている。欧州に豊富な販売・サービス網を保有し、日精樹脂にとって戦略地域である同地域で市場展開を強化できる。一方、日精樹脂のグローバル拠点を活用し、ネグリ社製品を拡販する。
 日本製鋼所は、4月に連結子会社の名機製作所を吸収合併する。名機製作所は自動車関連向け特殊大型射出成形機を軸に事業展開している。近年、自動車業界では大型外装品・内装品など、さまざまなプラスチック部品で材料開発、複合化が進展している。大型機ニーズが一段と高まるなか、生産能力の向上が欠かせない。吸収合併によりシナジーの最大化を狙う。
 東芝機械は4月、社名を新しく「芝浦機械」に改称する。今後は自動車の軽量化・自動化に対応するプラスチック部品の需要に対応し、薄肉発泡成形や3色成形機など、多様なユーザーの要望に応える方針だ。
 射出成形機の業界は長年、需要が落ち込むと再編の動きが高まると言われていた。足元の需要が弱含むなか、事業基盤強化に向けたメーカー各社の新戦略を注目したい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る