政府が先ごろ発表した月例経済報告によると、10月の基調判断について、現状は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、そのテンポが弱まっている」とし先月から判断を据え置いた。しかし半導体不足の影響は予想以上に根深く、輸出の項目についても「半導体不足と東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給不足により、自動車等の輸送機械に弱さがみられる」とした。影響は来年まで続きそうだ。

 一方、GDPの5割超を占める個人消費については、9月後半以降も「全体としては弱さがみられる」としているものの「10月の宣言解除後には、外食の支出に上向きの動き」もあるとし、明るさもにじませた。ようやく夜の街に賑わいが戻ってきそうだが、引き続きマスクなどの感染対策を徹底し、再拡大に注意を払う必要があるだろう。

 先行きについては「感染対策を徹底し、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、国内外の感染症の動向や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある」とした。

 今回の月例経済報告では、岸田内閣の発足を受け「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」による「新しい資本主義」を起動させ、国民の安全・安心を確保するため新たな経済対策を策定するとしている。実効性のある政策を期待したい。

 一方、ここにきて原料価格の上昇が懸念されている。総務省が22日に発表した9月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月を0・1%上回り、1年半ぶりに上昇に転じた。政府はデフレからの脱却を目指しているが、原油価格の上昇を背景にガソリン価格や電気代が上がったことが背景となっており、悪性インフレにもつながりかねない。

 原油価格は足元でも大きく上昇しており、これがエネルギー価格はもとより化学品の価格上昇にも影響する。10月はエチレンやプロピレンといった基礎化学品の価格が上昇し始めている。一方で、中国で9月中旬からの電力制限を背景に、ファインケミカル製品も値上がりし始めた。鋼材の高騰によりドラム缶の価格も上げており、ドライバー不足やコンテナ不足によって輸送コストなど物流関連の費用も上昇傾向にある。

 今後の動向を注意深く見ていく必要があるだろう。

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