持続可能な原料を使った欧米化学企業のエンジニアリングプラスチック事業の幅が広がっている。優れた機能を保ちつつ、植物や生産工程で発生する残渣や端材などを原料にした製品が相次いで販売されている。持続可能な社会の実現の一翼を担う企業が、その責務を果たすために欠かせない取り組みである。

 トウゴマの種子から得られるヒマシ油を原料にしたアルケマのポリアミド11「リルサン」は持続可能な原料を使ったエンプラの先駆けだ。同社は販売開始70周年を迎えた2017年に「卓越した性能を備えた製品、そして植物由来原料を100%使用している製品の代名詞となった」と、その成功を誇った。

 1947年に仏セルキニーの紡績工場を再利用して最初の市販用バッチ生産を開始、49年には「リルサン」の商品名で販売が始まった。70年には米国で、2013年には中国で生産を始め、22年上期にはシンガポールで生産を開始する予定だ。

 特筆すべきはBASF、ジャイアント・アグロ・オーガニクス(JAO)、国際非政府組織(NGO)のソリダリダートとともに取り組んでいる、トウゴマ農家を支援する「プラガッティ・イニシアチブ」と呼ばれるプロジェクトである。最大の栽培地であるインドのグジャラート州で16年にスタートした。プログラムを通して農家の収入や生産性、水使用の効率向上などを実現している。

 アルケマ以外にも、多彩な企業が活動している。DSMは、超高分子ポリエチレン繊維「ダイニーマ」の原料をバイオベースに転換する取り組みを進めている。紙パルプの製造工程で得られる残渣トール油を用いたUPMバイオ・フューエルズのバイオナフサを使い、サウジ基礎産業公社(SABIC)がエチレンを生産、DSMがこのエチレンを原料にISCC(国際持続可能性カーボン認証制度)Plusに基づいたダイニーマを供給している。さらにリサイクルのために立ち上げた企業連合の活動も始まった。

 セラニーズは、マスバランスの観点でバイオベース原料を最大97%まで用いるグレードのポリアセタールを販売している。またポリアミドでは協力企業とともにカーペットやエアバッグの製造工程で発生する端材を回収、ペレットにしたものをコンパウンドにして提供している。

 いずれも持続可能な社会の実現に寄与する強い意思を示したものである。こうした製品を通して、しっかりと収益を計上し続けることができるのが、持続可能な社会の一つの側面であることを忘れてはならない。続きは本紙で

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