今年1月の改正バーゼル法施行で先行きが不安視されていた使用ずみプラスチックの輸出に健全さが戻っている。貿易統計によると、1月には2万5000トン台だったが、2月に3万4000トン、3月に5万7000トンを超え、4月には6万2000トンに達した。5月は5万1000トン、6月は5万9000トン規模。この辺りが現在の市場での巡航速度かもしれない。

 2020年が通年で82万トンだったのに対し、今上期は29万1000トンにとどまっているので減速は明らかだが、それでも底堅い需要があるようだ。17年末の中国による廃プラ輸入の停止措置以降、東南アジアに一気に再生樹脂工場が林立したこともあり需要は強い。足元は新型コロナの勢いが止まらないことや、海上輸送の確保が難しいこと、および輸送費急騰などの問題もあって調達がままならない部分もあるようだが、売り上げの確保のために工場稼働の意欲は強い。しかもバージン樹脂市況の騰勢から、使用ずみプラスチック市況も連動して上昇し、事業者の収益向上にもつながっている。

 中国による廃プラ輸入の実質禁止令および、それに追随した東南アジア諸国の輸入防止策、さらには改正バーゼル法の施行によって廃プラ貿易は壊滅するイメージを持たれることもあったが、実態は異なる。改正バーゼル法の意図は、あくまでも汚れたものの輸入禁止。法律の基準をクリアしたプラスチックは、むしろ安全性を担保され、SDGsを意識する優良企業にとっても積極的に利活用できることを認識すべきだ。

 一方、これまでなら輸出できていた“汚れたプラスチック”が輸出できなくなったことも事実。従来、きれいな使用ずみプラは国内循環され、汚れた廃プラが輸出される傾向が強かったが、現状では逆転した状況で、パラダイムシフトが起こっている。すでに始まっている技術開発などでの官民挙げた取り組みを、いかに円滑に社会実装につなげるかがポイントとなる。

 また新時代の廃プラ輸出において注意すべきなのが法令順守。今年に入って環境省のウェブページには、行政指導(厳重注意)として廃プラ関連の事例2件が取り上げられている。急な厳格化に戸惑う事業者がいても不思議ではないが、速やかに是正して法律にあった動きをすることで業界は健全に発展できる。脱プラや国内循環を増やすにも機能、性能、コストの壁から限界がある。法律を順守した正しい輸出産業を維持して、グローバルでのプラスチックリサイクルも推進することで、全体バランスを守っていくべきだろう。

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