回復傾向をみせていた経済環境は、新型コロナウイルス感染拡大の第3波到来とともに厳しい見方が広まっている。今年、歴史的な経済の落ち込みを記録した日本と世界だが、自動車産業を筆頭に急速に回復、このまま一本調子で成長が続くかとも思われていた。ウィズコロナの難しさを十分に思い知らされた事業環境にあって、企業は難しい舵取りが続く。

 内閣府が発表した7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比5・3%増、年率換算で22・9%増だった。1次速報値からの上方修正である。個人消費は5・1%増加したものの、住宅投資、設備投資は減少している。

 また10月の景気動向指数(CI、2015年=100)の速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比4・9ポイント高い89・7で5カ月連続で上昇した。基調判断は「下げ止まりを示している」を据え置いた。一方、数カ月後の景気を示す先行指数は0・5ポイント高く5カ月連続で上昇したが、上昇幅は9月から縮小している。

 ただ内閣府発表の11月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIは前月比8・9ポイント低下の45・6を示し、基準値の50・0を下回っている。先行き判断DIは12・6ポイント低下して36・5だった。基調判断は「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさが残るなかで、持ち直しに弱さがみられる。先行きについては、感染症の動向に対する懸念が強まっている」とまとめている。

 英国で始まったワクチン接種が世界規模で広がり、日本でも幅広く実施されることになれば状況は一変してくるだろう。ワクチン承認を巡っては株式市場の大幅上昇を招いており、これに対する期待感がうかがえた。企業トップの多くは「コロナが収束しても、かつてと同じようなかたちには戻らない」と指摘する。中期経営計画を修正し、ここ2、3年でコロナからの回復を図って次の成長につなげるとする企業もある。右肩上がりの製品需給が想定できないなかで、事業継続性と成長性の両にらみの戦略が問われている。

 年初から、すぐに対応に追われたコロナの影響で、多くの企業が財務的にも厳しい状況を強いられている。ここにきての第3波到来によって年末年始も自粛ムードが広がり、消費にも影響してくる。政府による追加の緊急経済対策も示されたが、少しでも景気に刺激になることを期待したい。企業は年明け以降も厳しい状況を覚悟し、飛躍に向けた施策を着実に実行するしかない。

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