プラント・産業機械各社が新たな取り組みを加速している。2019年は世界経済の失速、新興国需要の低迷などで設備投資が落ち込み、厳しい1年だった。年明け後も、さまざまな社会・経済問題が山積するなか、新しいビジネスモデルの構築が急務だ。各社は急変する市場の下で次の手を探っている。
 19年は米中貿易摩擦、英国のEU離脱、中国経済の停滞などで世界的に設備投資が減少。北米、中国、アジア、欧州ともダウンを余儀なくされた。低迷の理由は、さまざまだが、基本的な要因として経済が従来の製造業中心からサービス業にシフトしている点が挙げられる。
 これら環境変化を受けて、造船重機メーカーも従来の「重厚長大型」を中心とした事業形態から質的な転換を図り始めている。三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、発電プラントの新設受注で苦戦する一方で電力需要の増加に対応。火力発電設備の運転を最適化する最新デジタルソリューション「MHPS-トモニ」で長期保守契約を結ぶケースが増えている。三菱重工業の泉澤清次社長は「新設に限らず、もっとビジネスのウイングを広げてサービス事業を拡大する」と強調する。
 IHIは昨春、横浜事業所に技術開発拠点「IHIグループラボ」を開いた。オープンイノベーションの推進と実験の強化が目的で、内外技術者との“共創”を通じ新たな製品を生み出していく。従来のカタログ営業に加え、迅速な対応によって新たな価値創造を急ぐ構えだ。
 日立造船は、先端情報技術センター「AI/TEC」が中心となって、ごみ焼却発電プラントなどにおける遠隔監視やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータの活用、さらに人工知能(AI)なども駆使し、アフターサービスのビジネスで付加価値アップを図っている。4月には次期中計が始まる。現中計は海外プラントの設計・調達・建設(EPC)で損失を計上したが、次期では安定収益を目指す。
 落ち込んだ設備投資が回復するかどうか判断は難しい。中国発の新型肺炎も世界経済にはマイナス要因だ。ただ顧客サイドは、いつまでも設備投資を凍結していると市場での競争力を失う。温暖化対策が強く求められるなか、既存設備ではCO2削減の目標達成も困難だろう。
 今夏で米中貿易摩擦の発生から2年が経過するが、その辺りから投資案件が回復すると予測する関係者も多い。とはいえプラント各社は新設案件に依存せず、サービス事業で新しい提案ができるかが極めて重要になってきたことは疑いない。

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