新製品や新規事業を軌道に乗せる際、いかにして多くの研究開発担当者や一般消費者らに知ってもらい、使ってもらえるかが、大きな壁として立ちはだかる。展示会への出展をはじめ、あの手この手で乗り越えようとするなかで近年、クラウドファンディングを活用する事例が目立つ。

 インターネット上で実現したいことを発表し、賛同した人から資金を集めるクラウドファンディング。認知度が高まるなか、新製品を本格発売する前に、まずクラウドファンディングを通じて反響を探る企業が増えている。

 共栄社化学(大阪市)は2021年2月、数十年ぶりに家庭向け衣類用洗剤・柔軟剤を手掛けるに当たり、事業を担うグループ会社としてアンボメー(同)を設立した。アンボメーは自らECサイトを構築し、商品を販売しているが、先立ってクラウドファンディングサイト「Makuake」(マクアケ)で支援を募った。洗剤と柔軟剤の一式などを返礼品に購入を呼び掛けたところ、総額215万6500円に到達。目標の100万円を大幅に上回った。

 電子材料や化学品などを扱う商社の小池産業(大阪市)もマクアケを利用した。化粧品関連事業の育成に力を入れているが、この一環としてアルガンオイル「DIHYA」(ディヒヤ)を開発し、自ら売り出すことを決めた。ディヒヤは、モロッコに自生するアルガンの木の種子から採れるオイルを、特殊なコールドプレス製法によって酸化を抑制しながら抽出したもの。肌や頭髪の潤いを保てるなどの効果を有する。品質の高さ、機能性が評価され、ディヒヤ購入総額は約184万円と、目標に設定していた170万円を超えた。

 丸住製紙(愛媛県四国中央市)は21年にセルロースナノファイバー(CNF)にかかわる開発センターを創設。生産技術の確立を急ぐとともに事業化に向けて用途開拓に努めている。同社のCNF「ステラファイン」は独自の化学変性技術を駆使しており、透明性が高く、チキソトロピー性を有するといった特徴を兼ね備える。この特徴を生かしたステラファインの第1弾商品として、新感覚の使い心地を実現したハンドジェルミストを開発した。手肌になじませると、サラサラとした感触で潤いを与えられる。現在、マクアケで購入を募集しているが、すでに目標金額を突破している。

 今後もインターネットを用いた新たなマーケティング手法や販売支援サイトなどが生まれてくるだろう。こうしたサービスを見逃さぬようアンテナを高く張り、果敢に商機をつかみ取ってほしい。

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