4月1日から一部の規定を除き改正種苗法が施行される。国内で開発された新品種の海外への持ち出し防止に効果的なルールとなる。新品種の育成者にとっては知的財産権が強化され、意図せぬ海外流出リスクの大幅な低減につながる。海外の農業生産者による勝手な振る舞いを抑え込むことに期待したい。

 改正種苗法は昨年12月9日に公布された。国内で開発された優良品種が外国で増殖・栽培され、国産の農産物輸出戦略に支障が出ていることから品種登録制度の見直しが行われた。ブドウ品種「シャインマスカット」の苗木が流出し、中国で名称を変えて販売されたり、東南アジア向けに輸出されたりする事例や、韓国の生産者に期間限定で契約者のみに許諾したイチゴ品種「章姫」「レッドパール」が第三者に流出して広く栽培された事例などが、DNA判定技術の発展によって判明したことはよく知られている。現行法では種苗の増殖が制限されない場合や、いったん販売されると育成者権者の意思に反する海外への持ち出しを制限できない場合がある。今回の大きな改正点となるのが、育成者は登録品種の出願時に国内利用限定や都道府県など栽培地域限定の条件を付すことができるようになること。海外へ持ち出されることを知っていながら種苗などを譲渡した者も、刑事罰や損害賠償などの対象となり得る。

 その一方で新品種の育成者には、現行法で努力義務であった登録品種の表示義務が課せられる。日本種苗協会など種苗関係6団体が共同で作成した「PVPマーク」でもよいが、育成者側は手続きが増えてしまう。また改正種苗法では、2022年4月1日に施行する制度として登録品種の自家増殖に関して育成者の許諾を必要とした。育成者は育成した新品種の増殖を把握できるようになるわけだ。現行法では、登録品種でも収穫物の一部を次期作の種苗として自由に利用することが国内農業生産者に認められている。だから新しい許諾制度には利用者側から不満の声が上がり、燻り続けている。許諾料や煩わしい手続きの発生が大きな理由の一つと考えられる。

 気候変動やニーズ多様化対応のため、耐候性、耐病性など持つ新品種が求められている。新品種が市場普及するには、知名度と、栽培量が必要条件であることも事実。賛否両論ある改正種苗法だが、外国流出や持ち出された種苗からの果実などの日本への輸入の抑止力となるとともに、海外の消費者が安心して純正日本産を購入できる環境が整い、日本の農業の発展につながることが何より大事である。

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