政府は、臨時休校にともなうフリーランスの保護者支援などを盛り込んだ新型コロナウイルス対応策の第2弾を決めた。予備費2715億円の活用など4300億円超を支出する。中小企業を対象とした実質無利子・無担保の資金繰り支援も用意した。ただ中小企業を中心に、すでに経営環境は悪化している。タイミングも遅く、規模も不十分との謗りは免れない。企業への支援では柔軟で機動的な対応が求められる。
 急速な経済の悪化が中小・零細企業の経営を圧迫している。インバウンド需要急減に加え、イベントや会合の自粛で街は人影もまばらだ。新型コロナの影響で倒産した企業は足元、食品やサービス企業が中心だが、今後は卸や小売、製造業へと波及することが予想される。
 そもそも中小企業は昨年来、増税だけでなく、台風による経済活動の停滞や軽減税率導入にともなう企業の増税前の設備投資、暖冬による季節商品の需要減などが重なり、厳しい経営環境に直面していた。国内景気の悪化が鮮明になってきた矢先、新型コロナの影響が加わって窮地に立たされている。
 政府の緊急対策第2弾では日本政策金融公庫などを通じ、個人事業主や中小規模事業者向けに実質無利子、無担保で融資する5000億円規模の新制度を設ける。雇用を継続する企業への助成金を拡充するなどし、ダメージを和らげたい考えだ。
 中小の化学メーカーに話を聞いても、昨年末ごろから受注が減り始めているとの声が多い。中国からの部品供給の途絶や国内需要減に直面しており、こうした状況がいつまで続くのか、見通しが立たないのが一番辛いところだ。資金繰り支援を中心とした今回の対策はもちろん必要である半面、一時しのぎ、対症療法的との批判も挙がる。
 また、無利子・無担保であっても貸し付けであることには変わりない。経営環境の厳しい企業が、どれだけ融資を受けるだろうかと疑問視する向きもある。政府は今後、融資などの一時的な対応だけでなく、企業の業績改善に資する大規模な金融政策など二の矢、三の矢を柔軟に放つ必要があろう。
 もちろん無利子・無担保の融資は将来焦げ付くリスクをともなう。かつて業績が悪化したように見せかけて低利融資するなどの不正も散見された。政府支援が”ゾンビ企業”を延命させた過去も忘れてはならない。
 経済対策は、雇用維持と不良資産の肥大化を防ぐ難しいバランスの上にある。こうした時期だからこそ、金融機関は貸しっ放しにせず、企業の経営改善の支援にも努めて欲しい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る