新型コロナウイルス感染拡大を受け、電機各社がニューノーマル(新常態)における新たな働き方に向けた取り組みを始めている。富士通は、人事制度やオフィス環境を見直し、社員のさらなる生産性やイノベーション力向上を目指す「ワークライフシフト」を推進。日立製作所は、独自開発の幸福度を計測する技術を、社内の組織活性化などに活用するとともに幅広い分野に応用し、新産業の創出につなげようとしている。
 富士通のワークライフシフトは最適な働き方を実現する「スマートワーキング」、オフィスのあり方を見直す「ボーダレスオフィス」、社内カルチャーの変革を促す「カルチャーチェンジ」の3つの要素からなる。具体的にはコアタイムのないフレックス勤務を国内グループ全従業員に適用を拡大。在宅勤務を前提に、その環境整備に月額5000円を補助して通勤定期代を廃止、実費精算する。単身赴任もテレワークと出張で対応できれば在宅勤務に切り替える。
 オフィス環境も整備する。ITシステムの実証やショーケース、顧客とのコラボレーションなど主な機能を備えるハブオフィスを全国の各エリアに設定。全席フリーアドレス化してオフィス規模を現状の50%程度に最適化する。一方でコネクトを重視するサテライトオフィス、集中をテーマとしたホーム&シェアードオフィスも充実し、業務内容に応じて働く場所を選べるようにする。オフィスの利用状況のリアルタイム可視化やデータ分析で利便性の向上を図るとともに、自社のAI(人工知能)「Zinrai」を活用して業務内容を可視化。生産性向上や業務の質改善につなげる。
 日立は、スマートフォンやウエアラブル端末を用いて人の幸福感を定量的に計測する技術を新会社「ハピネスプラネット」で事業化する。昨年、従業員の前向きな心を引き出すスマホアプリ「ハピネスプラネット」を開発し、グループ内では在宅勤務におけるマネジメント支援や組織活性化に活用。ニューノーマル時代における働き方の基本ツールと期待する。新会社では自治体や企業と連携し、計測した幸福度を街づくりや介護・医療、住まい選びなどに活用する「ハピネス&ウェルビーイング産業」の創出を目指す。
 ニューノーマルの新たな働き方の模索は始まったばかり。富士通もDX企業として社内での新たな働き方の取り組みを踏まえ、サービス・ソリューションの提供につなげる考えだが、各社が自社の取り組みで培った独自の経験や知見を生かし、新事業・サービスで新たな成長を目指してほしい。

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