関西には、挑戦することに前向きで、研究開発に熱心な化学企業が多く存在する。人口減少や首都圏への一極集中などによって地域経済格差が進むなか、各社は独創的アイデアや技術を生かし、新たな製品やサービスを創出しようと躍起だ。既存の領域にとどまることなく、ヘルスケア・ライフサイエンス、環境・エネルギーといった新たな領域に踏み出し、将来の安定成長へ道を開こうとしている。
 急速に変化する外部環境のなか、高品位・高機能な製品を提供し続けるため、研究開発への投資を積極的に行っているのが大阪有機化学工業だ。大阪事業所(大阪府柏原市)において新研究棟の建設に着手した。今年11月の開所を目指している。新棟は同社の中核をなす研究施設として、既存事業の研究開発にとどまらず、新規事業創出拠点としての機能も兼ね備えた最新鋭の研究施設とする。同社はセンサー・IoT関連、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)・調光、ハプティクス・ロボティクス、環境・自動車といった分野を対象に新規事業育成に力を注いでいるところ。機能性エラストマーや伸縮性導電材料、調光材料といった新規素材を相次ぎ開発している。新研究棟は在籍する研究者だけでなく、同社と関連する研究者がシームレスに連携し、安全かつ効率的に研究開発に従事できる環境を整えた施設を想定。さらに挑戦的・独創的な研究開発に取り組んでいく構えだ。
 大阪ソーダは、基盤技術が生かせる既存事業周辺で新たな種を見つけ、育てていこうとしている。成長が期待できるエネルギー・環境分野、ヘルスケア分野、電子材料分野での研究開発を加速させており、ポリマー電解質や水系バインダーといった次世代電池素材のほか、カーボンナノチューブ(CNT)、銀ナノ粒子に期待している。
 従来とまったく異なる新規事業として、M&A(合併・買収)や新拠点用地の確保などライフサイエンス分野での投資を活発化しているのが第一工業製薬。昨年末にグループ会社のバイオコクーン研究所(岩手県盛岡市)の新工場棟(福島県東白川郡)が完成、純国産の健康補助食品の品質追求を図っている。
 既存事業以外の新規分野への参入は大きな挑戦だが、将来の成長には欠かせない。また異業種間競争がさらに激しくなるなかで、自前主義にこだわることなく、外部技術やアイデアを積極的に取り込まなくてはならない。こうしたチャレンジ精神によって革新的な製品・技術が生まれ、同時に地域経済の再生・活性化にもつながることを期待したい。

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