欧州特許庁(EPO)と国際エネルギー機関(IEA)が9月に電池技術関連の特許に関する調査結果をまとめた。それによると2000~18年の特許出願数上位10社中、7社が日本に拠点を置く企業だった。今後、日本は電池技術の追求にとどまらず、ビジネスにおける成功を手にすることが強く望まれる。

 世界の電池技術関連の特許出願数は05~18年に年平均14%増と、全技術平均の4倍の成長率を記録。18年には7000件超と00年の7倍に達した。このうち日本の出願数は3分の1を占め世界トップ。2位の韓国の約2倍と他を圧倒している。同調査は「電池の革新で日本は00年代に世界をリードしていたが、過去10年間で各国との差がさらに広がった」としている。

 企業別でも00~18年の出願数はトップこそ韓国のサムスン電子だが、2位パナソニック、4位トヨタ自動車、6位日立製作所、7位ソニー、8位NEC、9位日産自動車、10位東芝と、日本を拠点とする企業が多くランクインする。

 また、蓄電能力改善を目的とした出願の90%はLiB(リチウムイオン2次電池)関連で、民生用から車載用、定置型に広がり一段と関心が高まっている。18年の電池セルに関連する出願も45%はLiB関連。一方、次世代として期待される全固体電池の出願は10年以降、年平均25%増加しているが、日本が全体の54%を占め、2位の米国、3位の欧州を引き離している。

 このように電池分野で日本の技術力の高さは明らかだ。しかし、その技術力を製品の開発やビジネスの拡大に十分生かせていないことは大きな課題だ。同調査では「日本はEV(電気自動車)の主要技術であるLiBの特許出願で世界をリードしているものの、国内のEV市場拡大にはつながっていない」と指摘。実際、中国は19年のEV世界市場で約5割の110万台を販売したが、日本は2%にとどまっている。

 19年にLiB開発に貢献した旭化成の吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞したことは記憶に新しい。電池に携わる人だけでなく、多くの人に希望や感動を与えた。一方で米テスラは、LiBの価格を現在の半分以下にすると発表し、大きな衝撃を与えた。

 これからは単なる技術力の高さだけでなく、新たな発想に基づき、優れた電池やそれを用いた製品、アプリケーションを開発することが重要になる。日本の材料、電池、自動車メーカーは、より連携を強め、さらなる成長で世界をリードし、日本経済を力強く牽引していくことを期待する。

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