化学企業の業績はコロナ禍から立ち直り、成長軌道を確保したようにもみられる。自動車や半導体関連の好調に加え、製品市況の好転を受けて4~6月期に過去最高業績を更新した企業は多い。だが、原料価格の高騰といった懸念材料は付きまとう。先行きの不透明感は拭えず、いぜん予断は許されない。

 内閣府が発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0・3%増、年率換算1・3%増だった。2四半期ぶりのプラス成長だが、新型コロナウイルスの感染拡大で成長率全体は低めだ。半導体やデジタル関連などを中心に企業の設備投資が持ち直したものの、東京都や大阪府などに緊急事態宣言が出されていた時期であり、多くを占める個人消費は外出抑制や飲食店の営業時間短縮、大型商業施設の休業などが影響した。

 第1四半期業績を発表した企業では、同時に通期予想を上方修正するところも相次いだ。だが、コロナ感染が再拡大しているほか、原料価格の上昇、半導体不足が自動車産業に与える影響などを織り込み、予想を据え置く企業も目立った。

 景気の持ち直し感に乏しい中小企業は、さらに注意が必要だ。日本政策金融公庫が発表した全国中小企業動向調査によると、4~6月期の業況判断DIは前期のマイナスから改善し9・1となったものの、7~9月期は8・5に低下するとした。ただ10~12月期は再び13・6への上昇を見通すなど期待感は強い。従業員数20人以下の小企業では、さらに厳しい状況が続いている。4~6月期の業況判断DIはわずかながらマイナス幅が縮小したが、来期はマイナス幅の拡大を予想した。

 中小企業の当面の経営上の問題点としては「売上・受注の停滞、減少」が49・3%で最も多く、次いで「求人難」が15・3%、「原材料高」が11・8%。原材料高に関しては6・1ポイント上昇しており、懸念材料としての存在感が一気に高まっている。

 トヨタ自動車が9月に計画比で4割の減産を行うと発表した。課題となっていた半導体不足に加えて、東南アジアで新型コロナの感染が再拡大していることが背景にある。需要はあっても部品調達・工場稼働がままならない状況が続けば、経済の本格回復の足かせになりかねない。ほかの自動車メーカーにも同様な動きが広がっており、注意が必要だ。

 コロナ収束も見通せず体力勝負の感は否めない。本格回復の遅れが懸念されるなかでは、持続成長に向けた施策を着実に実行するしかない。

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