東京都が先月末、街頭で若者へのアンケート調査を行った。緊急事態宣言下においても外出が減らない要因を分析し、より効果的な外出自粛の呼びかけにつなげるのが目的だ。「何をしに街に来たのか」「緊急事態宣言下にもかからず、なぜ外出したのか」「どのような呼びかけなら外出を控える気になるか」などを聞いている。若者の感染者の割合が多い以上、対策は必要だ。ただ傍若無人な若者がいる一方で孤独や不安を感じている多くの若者がいる。その割合は他の年代に比べて高い。部屋に押し込めるだけでは問題を解決したことにはならない。
 マンダムが全国の20~69歳の男女1110人を対象に、コロナ禍で対面コミュニケーション減少によって感じるマイナス面を調査した。「孤独や寂しさ、不安を感じることが増えた」と回答した割合は20代では3人に1人。世代ごとに違いがあり、上の年代に比べ最も高かった。笠置遊立正大学心理学部准教授は、この結果を「20代は学校や職場など新しい環境で新しい対人関係を築き、関係を深めていく段階にある人が多いと考えられる。しかし学校の授業がオンライン化し、就職先でテレワーク勤務が増えるなどして環境的に難しくなったことで、孤独や寂しさ、不安感につながっているのではないだろうか」と分析している。
 コロナ禍で若者ほど精神的ストレスを抱えている傾向は日本ばかりではない。スイスのバーゼル大学が国内に住む約1万人を対象に行った調査では、重度の抑うつ症状があると答えた割合は若い年代ほど高く、14~24歳では29%と45~54歳の2倍にもなった。
 スイスの公共放送によると、スイス東部ザンクト・ガレンでは、3月から4月にかけて若者の集団と警察が衝突する事件が相次いだ。スイスでは昨年12月からレストランやバー、スポーツ施設が閉鎖、今年1月から生活必需品以外の商店の営業を停止し、在宅勤務を義務付けていた。若者グループは、新型コロナの制限措置に反対するため組織されたものではない。しかし多くのメディアが事件とコロナを結び付け、若者の社会的・文化的接触の欠如が関係していると報じたという。この事件を受け、主要政党の青年部は連名で政府に対し、危機管理に若者の意見をもっと反映させることを求める公開書簡を出した。
 日本では東京・高田馬場駅前で「路上飲み」をする学生たちがたびたび報道された。その光景は目に余る。ただコロナが彼らから奪ったもののを思うと、対策に腰の引けた政府への怒りのようにも見えてくる。

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