東京証券取引所は、昨年12月末に「新市場区分の再編」案を発表した。現行の「東証一部」「東証二部」「マザーズ」「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」という5つの市場区分を、2022年4月1日をめどに「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの区分に変更するものである。東証一部に代わる最上位のプライム市場への上場基準を厳しくすることで企業の質的向上を促し、海外機関投資家などグローバルな投資マネーを呼び込むのが狙いだ。

 再編案によると、プライム市場の上場条件として流通株式比率35%以上、流通株式時価総額100億円以上、時価総額250億円以上という基準のクリアと、新たな企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の適用が求められる。

 こうしたなかで厳しい選択を迫られるのが、東証一部上場で時価総額250億円以下の中堅化学企業だろう。現在、所属業種(中分類)で「化学」に分類されている東証一部上場企業は147社ある。うち直近の時価総額が250億円を満たしていない企業が37社ほどある。流通株の定義を従来よりも厳しくする予定にあることから、少なく見積もっても40社程度はプライム市場への上場基準を満たしていないと推察される。

 プライム市場に残れず、スタンダード市場への移行を余儀なくされるなら、これまでの「一部上場」というステータスは失われる。同時にTOPIX(東京株価指数)から除外され、株価が大幅に下落する可能性もある。海外機関投資家は、TOPIXをベンチマークにインデックス投資をする場合が多く、東証一部上場企業はTOPIXに採用されることで株価が自動的に買い付けられ、適正価格より割高になっているからだ。

 東証は、現在の一部上場企業の「強制降格」を懸念する声に配慮して猶予期間を設ける考えだ。具体的にはプライム上場基準未達でも当面はプライム市場に移行・残留できるようにし、25年までは基準を満たせるように促していく方針だ。

 プライム上場基準未達企業が「プライム市場への残留」という選択肢を採るならば、今後、政策保有株式を売り出して流通株式比率を引き上げる必要があるだろう。株価向上につながる成長戦略の策定・実行と積極的なIR・PR活動を展開することも求められよう。

 その際は、化学業界唯一の日刊専門紙である本紙を大いに活用してもらいたい。化学業界の発展に向け、日々の報道を通じて、これらの企業を応援していくつもりだ。

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