化学業界の業績回復が鮮明となるなか、関西の化学関連企業が2022年3月期の業績予想を相次ぎ上方修正している。自動車や半導体向けの製品需要増加とともに、製品市況の好転などによって想定以上に事業環境が改善している。同時に構造改革にともなう収益改善が進展しており、第2四半期以降も回復基調が継続する見通しだ。

 エア・ウォーターは、21年4~6月期(IFAS適用)で全事業で増収増益を達成。想定を上回るペースで事業環境の改善が進んだほか、ここ数年進めてきた事業構造改革で収益体質が向上した結果、第1四半期業績としてはコロナ前の水準を上回った。通期では売上収益を期初予想比100億円増の8900億円、営業利益で同50億円増の630億円に修正。営業利益に関しては現中期経営計画の最終目標である600億円を大きく上回る見通し。

 ダイキン工業の4~6月期は、営業利益が前年同期比約2倍で過去最高を達成。フッ素樹脂は世界的な半導体・自動車関連の需要回復が鮮明となったほか、フッ素ゴムも自動車関連を中心に需要回復が顕著だった。第1四半期が業績予想の想定を上回ったことから通期業績などを上方修正した。

 荒川化学工業は、4~6月期に自動車関連分野や5G関連分野で光硬化型樹脂の販売が増加したほか、印刷インキ用樹脂や塗料用樹脂、ロジン系粘着・接着剤用樹脂、水素化石油樹脂の販売が堅調に推移した。第1四半期において需要環境が好転し、販売が上振れたことなどから第2四半期および通期業績予想を修正した。

 ハリマ化成グループも、国内需要の回復に加え、欧米での粘接着剤用樹脂や中国の製紙用薬品事業が堅調で第1四半期は売上高、利益ともに前年同期に比べて大幅に増加した。同社グループにおける欧米での需要回復などが見込まれることから第2四半期、通期とも前回の予想を上回る見通し。

 日本触媒は、アクリル酸およびアクリル酸エステルの海外市況上昇や販売数量の増加などにともない、通期の売上収益を前回予想に対し250億円増の3250億円、営業利益は同90億円増の220億円に修正した。

 第2四半期以降も、世界的なコロナ再拡大の影響長期化や、原材料価格および物流コスト上昇など不透明な状況は続くとみられ、各社とも手を緩めることなく経営体質強化を進める構えだ。これまでの体質改善を維持しつつマイナス影響を吸収することで、V字回復からのさらなる成長を実現してもらいたい。

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