政府は2兆円のグリーンイノベーション(GI)基金を活用した研究開発プログラムの第2弾として、水素・アンモニアなどCO2フリー燃料を用いる次世代航空機および次世代船舶の開発・社会実装に取り組むことを決めた。航空輸送、海上輸送とも今後も需要増が見込まれ、主要国の多くが目指す2050年カーボンニュートラルを実現するには大幅な温室効果ガス(GHG)排出削減が求められる分野だ。航空機、船舶ともに裾野の広い産業であり、産業競争力向上の観点からも次世代航空機・船舶の開発で先行する必要がある。

 国際線運航業者には27年以降、カーボンオフセット制度(CORSIA)を利用することが義務付けられており、機体・エンジンの改良と代替燃料の導入などが求められている。水素航空機についてはエアバスが35年に実用化すると発表しており、開発競争が始まっている。

 代替燃料開発は他のプログラムで扱う予定であるため、GI基金を用いたプログラムでは「水素航空機向けコア技術として水素エンジンシステム」「燃料貯蔵タンク」「機体構造」の3つのテーマに取り組む。水素を燃料とするとジェット燃料の4倍の体積を搭載する必要があり、タンク重量も増大する。この問題のハードルは高い。軽量化を実現するための複合材料の技術も確立されていない。

 事業期間は10年間。35年以降の実用化に間に合うよう、30年までにOEMメーカーへの提案に必要な技術レベルを達成するのが目標だ。

 国際海事機関(IMO)は50年に温室効果ガス排出量を08年比50%以上削減する目標を掲げており、日本は28年までにゼロエミッション船の商業運転を目指すとしている。ただ30年時点で水素・アンモニアの供給インフラが構築されるかは不確実であるとし、ゼロエミ船燃料は水素・アンモニアと、バイオおよびカーボンリサイクルメタンの2通りのシナリオが想定されている。このためGI基金プログラムでは水素およびアンモニア燃料のエンジン・タンク・供給システム開発とともに、将来のCO2フリーメタンへの移行を考慮して、LNG(液化天然ガス)燃料船の効率化にも取り組むとしている。

 次世代航空機・船舶で使用される水素燃料は、日本が開発・実証で大きくリードしている液体水素であることに注目したい。液体水素は火力発電燃料とした場合に、アンモニアなどと比較した場合の優位性が必ずしも明確ではなかったが、航空機・船舶燃料に適していることが評価されれば可能性を大いに広げることになるだろう。

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