第6次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が動き出している。経団連は2月24日に「エネルギー基本計画に対する経団連の考え方」を示した。わが国のエネルギー政策について「S+3E(安全性の確保を大前提とする安定供給、経済効率性、環境性のバランス確保)を基礎としたうえで、脱炭素化・分散化・デジタル化(3D)のトレンドをつかんだエネルギー・電力システムの構築を図るものとすべき」とし、次期基本計画では「中長期的なエネルギー・電力システムの将来像と、その実現に向けた政策方針を具体的に示していくことが求められる」とした。また、昨年10月の菅義偉首相による「2050年カーボンニュートラル」宣言を「わが国が気候変動問題の解決に真摯に取り組む方針を内外に示す英断であり、経済界として高く評価する」とした。

 4月16日に予定される日米首脳会談でも、日米両政府は2050年の温暖化ガス排出実質ゼロの目標や具体的な道筋などについて協議する方針であり、日本だけでなくグローバルに対応すべき課題だといえよう。

 経済同友会も3月26日に「エネルギー基本計画見直しに関する意見」を発表した。そのなかでエネルギーミックスについては、再生可能エネルギーのみならずゼロエミッション電源としての原子力、火力の高効率化、省エネや蓄エネの推進などバランスを取りながら進めていくとともに、水素・アンモニアなどの革新的技術や、核融合炉などのムーンショット技術にも挑戦していく必要があるとの見解を示した。エネルギー政策は再生可能エネルギー、原子力、石炭など立場や価値観によって考え方が対立するテーマであることから、データやファクトに基づき国民が十分に理解したうえで議論し、選択していくことが重要となってくるだろう。

 エネルギー政策が抱える課題は多い。コロナ禍でグローバルサプライチェーンが分断され、重要物資の自国調達の強化が求められている。日本が要素技術で先行、世界をリードできる可能性がある蓄電池、水素、次世代太陽電池などの分野も、実用化や社会実装がスピード感を持って進めることができず、他国に先を越される危機が顕在化している。他方、デジタル化の進展によって、さまざまな技術革新(新素材の開発)・サービスの開発が進み、エネルギー分野でも電力需給・ネットワーク技術をコアにしたサービスをはじめ、新たなプレーヤー・サービスが登場する可能性が高まっている。こうした課題を解決し、S+3Eを実現できる計画の策定を願いたい。

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