欧米化学企業の事業再構築が前進している。コベストロが買収を検討するとしていた分野で具体化に踏み切る一方、エボニック インダストリーズ、ランクセス、デュポンなどが非コア事業から撤退。厳しい環境に直面するなか、確固とした成果を挙げることが求められる。

 コベストロは、コーティング樹脂を主力製品にするDSMのレジンズ&ファンクショナルマテリアルズ事業を買収する。塗料や接着剤、高性能フィルムの原料などを手がける塗料・接着剤・スペシャリティーズ(CAS)事業の強化が狙い。トーマス・トゥプファー最高財務責任者(CFO)は2018年の本紙会見でM&A(合併・買収)の可能性を探る方針を明らかにしており、実行段階に入る。

 「Niaga」のブランドで知られるポリエステル系接着技術、太陽光発電向けコーティング、3D印刷関連製品なども買収の対象になる。Niagaを用いると、埋め立てや焼却による処理が多いカーペットを100%リサイクルできるようになる。経営戦略の柱である持続可能性に寄与する技術である。

 エボニックは、高吸水性樹脂(SAP)事業を分割する方針を固めた。他社との提携や売却などを対象に検討していく。17年に「ベスト・スペシャリティケミカル・カンパニー」に躍進することを決め、経営資源を成長エンジンに位置づける「特殊添加剤」「アニマルニュートリション」「スマートマテリアルズ」「ヘルス&ケア」に集中している。SAPはスペシャリティケミカルの中核事業ではないとの判断だ。

 このほかランクセスは逆浸透膜(RO膜)を水処理大手のスエズに売却することで合意、デュポンはトリクロロシラン事業とポリシリコン事業を手がけるヘムロック・セミコンダクターの持ち株をヘムロックに売却した。一方でランクセスは、イオン交換樹脂に経営資源を集中して水処理関連事業を強化する計画で、年2万~3万立方メートルの生産能力を想定した新プラントを建設する。投資額は8000万~1億2000万ユーロになる見通し。デュポンは水処理関連事業の拡大に向けた複数の買収とともに、DIC子会社のサンケミカルから、工業用の水処理用途で用いられる大型中空糸脱気モジュールの世界市場における独占販売権を取得した。

 いずれも事業のポジションを見極めたうえで売却を決め、同時に将来の成長を見据えた投資や提携に踏み切った。買収を決めたコベストロとともに、しっかりと結果を出してステークホルダーの信頼を、さらに高めねばならない。

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