COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)が13日、当初予定していた会期を1日延長して閉幕した。会期が延長されたのは、最後の全体会議で合意文書案に当初から盛り込まれていた石炭の使用を「段階的に廃止」という表現に、石炭に依存する途上国や中国の支持を受けたインドが反対したためだ。会議は全会一致が原則。シャーマ議長は「深い失望を理解するが、協定を守ることも不可欠だ。この展開を深くおわびする」と謝罪。会場からは拍手が起こったという。まるで気候危機の深刻さを理解しない途上国が横車を押したようだが、それだけだろうか。

 地球温暖化問題を巡る先進国と途上国の対立において忘れてはならないのは、そもそも、このような危機を招いた責任は誰にあるのかということだ。近年の温室効果ガスの年間排出量をみると、中国、米国、インド、ロシアで過半を占める。しかし累計ではどうだろうか。産業革命以降、二酸化炭素を吐き出しながら多くの石炭や石油、天然ガスを利用し、その恩恵を享受してきた先進国に責任があるのではないだろうか。

 パリ協定に先立つ地球温暖化に関する国際的な枠組みである京都議定書において、温室効果ガスの排出量削減を義務付けられたのは先進国だけだった。これに対してパリ協定は、法的拘束力はないものの、途上国を含むすべての参加国に排出削減の努力を求めた点で画期的だった。これは途上国が、地球温暖化問題を自ら取り組むべき課題として受け入れたことを意味する。
 先進国も途上国以上に地球温暖化に対する責任があることは自覚している。しかし、その表れともいえる途上国の環境対策への支援として「年1000億ドル(約11兆円)を20年までに拠出する」とした目標をいまだ達成できていない。この約束は、パリ協定が採択された15年のCOP21に先立つ09年のCOP15でなされたものだ。これが十分になされないままに気候変動対策の強化を求められても、途上国は釈然としないだろう。

 石炭を巡る議論は不調に終わったCOP26だが、合意文書には「気温上昇を1・5度Cに抑える努力を追求する」という表現が盛り込まれ、気候変動対策の強化には合意した。達成には50年までにカーボンニュートラル(CN)を達成する必要がある。これに対し中国は60年、インドは70年のCNを目標としている。地球温暖化問題解決への応分の負担を考えるならば、先進国はこうした国々を批判する前に、自らの目標を50年から前倒しするべきだろう。自覚が足りないのは途上国ばかりではない。

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