今年も雨の季節がきた。5月初め、昨年より11日早く梅雨入りした沖縄を皮切りに九州や四国、中国、近畿、東海地方などはいずれも平年より20日前後早い。1951年以降で多くの地域で1位、2位という早さで、大雨の期間が長期化する可能性もある。

 懸念されるのが水害リスクだ。近年、大雨、長雨による河川氾濫が多発している。2019年の「令和元年東日本台風」(台風19号)による阿武隈川や千曲川の堤防決壊、20年の「令和2年7月豪雨」による球磨川氾濫など規模も激甚化している。大雨に関しては「ゲリラ豪雨」に対する備えが必要と訴えられてきたが、ゲリラ豪雨はあくまでも予測不能な急な雨が短期間、強く降る現象につけられた名称。近年、激甚化災害を引き起こしているのは長期間継続する大雨によるものが多く、従来型の対策だけでは間に合わなくなりつつある。

 災害への対応策の一つとして、5月20日に災害対策基本法が改正され「大雨警戒レベル」を一部変更。災害リスクが高まった際に出される「レベル4」での行動として「避難勧告」「避難指示」のうち前者を廃止し「避難指示」へ一本化するなど、住民に迅速な行動をとりやすくした。

 そのなかで国土交通省が推し進めているのが流域治水。気候変動の影響によって21世紀末には全国平均で降雨量が1・1倍、洪水発生頻度は2倍になるとの試算がある。頻発化、激甚化する水害・土砂災害などに対して、氾濫の恐れのある下流域だけでなく、上流、支川も含め、国や自治体、企業や住民などあらゆる関係者が協働して事前防災対策に取り組むことが求められている。3月30日には全国109の一級水系すべてにおいて流域治水プロジェクトを公表し、現場レベルの取り組みとして本格的にスタートを切れるまでにいたった。

 総合的な対策には、治水ダムの建設・再生から利水ダムの活用、貯留施設や遊水池の整備、堤防の整備・強化、河道掘削、リスクが低い地域への移転など、極めて幅広い内容が含まれる。治水ダムを一から建設するとなると、極めて長い時間と莫大な資金が必要になる。それに比べて短期間、低予算で実行できるのが雨水貯留浸透槽など短時間の雨水の逃げ場を作る施策。一つひとつは小さくても数多く設置することで災害リスク軽減につながる。雨水貯留浸透槽が、軽量で施工性に優れるプラスチック製が今後も主流を占めるのは確実だが、メンテナンスしやすく、深く設置できるコンクリート製も狭い土地に向く。適材適所で敷設し、水害リスクの低減に役立てることが求められる。

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