経済産業省が10月上旬、環境関連の国際会議を一体的に行う「東京ビヨンド・ゼロ・ウィーク2021」を開催した。各国が進める地球温暖化対策が紹介され、将来の展望を示すものとなった。その主要イベントの一つである水素閣僚会議は今回が4回目。水素は化石燃料を代替し、脱炭素を実現するとして期待されるエネルギーだが、この3年間で水素の社会実装に向けた取り組みが大きく変化したことが明らかになった。

 3年前に国家レベルで水素戦略を策定していたのは日本と韓国のみ。その後、17カ国が新たに策定し、少なくとも20カ国以上が準備中という。民間企業においても2030年までに3000億ドル以上の資金が水素関連に投じられると報道されている。

 水素の社会実装に向けた取り組みは日本が先行した。水素キャリアの実証に巨額の国費を投じ、水素発電などの利用技術開発も進められていたが、実用化では燃料電池自動車(FCV)の限定的な普及にとどまっていた。

 一方、世界に目を転じると再生可能エネルギー資源が豊富な豪州が複数の水素・アンモニア開発プロジェクトを推進。欧州も北海の風力発電だけでは間に合わないことから大量の水素を域外から輸入する見通しとなっている。水電解装置の開発・実証も、欧州において日本を大きく上回る規模で計画が進んでいる。

 水素閣僚会議ではアルゼンチン、チリ、ニュージーランドなどの閣僚が水素輸出国のポジションを獲得すべく各種プロジェクトを推進していることを報告。化石燃料大国であるサウジアラビアは、水素エネルギーでも、その地位を維持する方針を表明した。

 世界は、確実に水素エネルギー社会の実現に向けて歩を速めている。会議では各国の政府の課題として、水素に切り替えるためのインセンティブ、製造業の脱炭素化支援、水素に関する認証制度・規制の整備などが挙げられた。

 日本が急がなくてはならないことは、すでに光り輝いている技術に一層の磨きをかけることではなく、国際的なサプライチェーン(SC)を構築し、海外に市場を獲得することだ。そのためには、認証制度の整備は極めて重要になる。例えば欧州には、ブルー水素はクリーン水素として認められないとする議論があるが、これは日本の立場とは異にする。

 日本と欧米だけでなく、豪州や中東、大きな水素需要が見込まれるアジア各国も巻き込んで、それぞれが受け入れられるルールが求められる。日本の主張を通すためにも、国際SC構築や社会実装で先んじることが必要だ。

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