海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)が先ごろ、海洋プラ問題解決に向けた人材育成プロジェクトとして「アジア働きかけ研修セミナー」を開催した。廃棄物処理法や容器包装リサイクル法など日本の廃棄物管理に関する法規制、リサイクルの取り組みなどを解説するもの。ASEAN(東南アジア諸国連合)各国のプラスチック廃棄物管理向上に向けた第一歩の位置づけだという。
 日本化学工業協会など化学業界5団体が設立したJaIMEが活動の柱の一つとするのがアジアへの働きかけ。この一環としてASEANプラスチック産業連盟(AFPI)に加盟するインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ミャンマー、ベトナムの人材を対象とした研修セミナーを企画した。
 カリキュラムのなかで注目したいのが「プラスチックマテリアルフロー図」の講義。プラスチック循環利用協会が毎年公表しているこの図は、プラスチックの生産から排出、処理処分までの流れを、国内樹脂製品消費量、使用済み製品排出量、有効利用された廃プラの量など40の構成要素でフロー化したもの。廃プラの処理処分の実態や有効利用率を知ることができる。
 例えば2018年度のフロー図を見ると、一般系廃棄物では「包装・容器等/コンテナ類」が全体の約8割を占めていること、マテリアルリサイクルされる使用済み製品の約半分がPETボトルと包装用フィルムであることなどが分かる。毎年のフロー図を比較分析すれば、有効利用率向上に向けた廃プラリサイクルの課題などを推察することも可能だ。政府の審議会や報告書、学会や産業界の解析などで広く活用されている。
 ASEANは海洋プラごみの一大排出地とされている。レジ袋の有料化、使い捨てプラ製品の使用規制など排出削減に向けた脱プラの取り組みが活発化しているが、問題解決の土台となるのが廃棄物管理。回収・処理システムのレベルを、もう一、二段引き上げることが不可欠となる。データの収集などフロー図の作成は簡単ではないが、取り組みを通じて自国の廃棄物管理向上に、何が、どのようなステップで必要かを理解することができるだろう。
 フロー図からは廃プラ有効利用によるエネルギー削減効果やCO2削減効果を見積もることもでき、気候変動問題の視点から廃棄物対策を考えることも可能。海洋プラ問題は生分解性素材など技術面に注目が集りがちだが、今回のJaIMEのような取り組みも日本が世界で果たすべき重要な役割。官民挙げて推進することを求めたい。

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