日本自動車タイヤ協会(JATMA)が、新たに低車外音タイヤの表示制度の運用を開始する。国内のタイヤ事業に関わるすべての事業者の参加を可能とするため、透明性と公平性の観点から業界自主基準を制定、2023年1月スタートする。JATMAは、10年に世界に先駆け低燃費タイヤのラベリング制度を実施しており、それに続くもの。消費者が分かりやすい環境を整えることで低車外音タイヤの普及促進を図る。

 自動車の走行時における騒音対策は、日本ではこれまで車両に対する騒音規制として行われてきた。その結果、エンジンなどに起因する騒音の低減が進み、タイヤの影響が相対的に高くなった。新車では18年から、国際連合欧州経済委員会が定める車外騒音基準値を満たすタイヤの装着が段階的に義務付けられているが、市販用タイヤについてはタイヤ騒音規制が導入されていない。近年はEV化によってクルマは、より静かになっており、その分タイヤを起因とした騒音に対する眼差しは厳しさを増している。

 来年から運用を開始する表示制度は、自動車タイヤ業界の自主的な取り組みとして、車外騒音基準値を満たす「低車外音タイヤ」の普及促進を図ることが目的。一般消費者向けの市販用の乗用車用タイヤ、小型商用車用タイヤおよび中・大型商用車用タイヤが対象となる。国連欧州経済委の「タイヤの車外騒音・ウエット路面上の摩擦力・転がり抵抗に係る協定規則第117号」の対象外となる応急用スペアタイヤ、プロフェッショナルオフロードタイヤなどは除く。新たに策定された条件の下で試験し、そのデータをタイヤ公正取引協議会のウェブサイトで一般消費者向けに公開する。乗用車タイヤの場合、断面幅で基準値(デシベル)が定められており、基準値を超えないものを低車外音タイヤとする。

 表示は「低車外音タイヤ」および、それに類する用語や新たに作成した図(マーク)を用いることとした。製品ラベルをはじめウェブやカタログ、店舗ポスターなどを通じ一般消費者へ周知を図る。

 燃費性能に関するラベリング制度では、タイヤを購入する際にラベルに表示されたグレードを参考に転がり抵抗の小さいタイヤを選択することができる。JATMAが実施した20年のCO2排出量に関する調査では、タイヤ使用時の1本当たりの排出量は196・6キログラムで、運用開始前の06年に比べ15・9%減少。年換算282・5万トンの削減効果となった。持続可能社会の実現に向け一般消費者に訴求するこうした取り組みが、より幅広い分野で求められる。

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