年が明けて1月も後半、新型コロナウイルスが収束する気配はない。生き方や働き方など、さまざまな事柄に対する価値観が変わりつつあり、新たなビジネスを創出する好機でもある。変革を推し進め、道を切り拓くべく挑んでほしい。

 転換期にあっては新興企業がもたらす新風に期待したい。近年、首都圏だけでなく関西においてもベンチャーやスタートアップが次々と誕生している。特異な技術、新規性のあるビジネスモデルが評価され、企業価値を高めている一社が大阪大学発のマイクロ波化学(大阪府吹田市)。各種化学品の製造にマイクロ波を駆使する手法を普及させようと挑戦している。マイクロ波は加熱したいターゲット物質に直接エネルギーを伝えることが可能で、反応時間を縮め、省エネルギーにつながるなど、化学産業におけるモノづくりを革新できる技術として国内外から衆目を集めている。太陽化学と共同でショ糖脂肪酸エステルを製造するほか、三井化学や岩谷産業などとも、それぞれ事業化計画を進めている。

 マイクロ波化学は、さらなる成長を目指し、事業をハイブリッド化する方針を打ち出している。これまでは各ユーザーの課題を解決する「提携ビジネス」が中心だったが、より主体性を持って能動的に市場の課題解決に取り組む「自社ビジネス」の育成にも力を注ぐ。自社ビジネスでは医薬、環境、電子材料、食品素材の4分野を重点に、中分子医薬品に分類されるペプチドを作ることができる固相合成装置や、ケミカルリサイクルなど複数のプロジェクトが進行している。

 西の最高学府、京都大学からも医療、エネルギー、デジタルといった領域でベンチャー、スタートアップが続々と生まれ、存在感を高めている。昨年9月にはセルロースナノファイバー(CNF)研究の第一人者である京大の矢野浩之教授と、コンパウンド、マスターバッチ(MB)に長けたヘキサケミカル(大阪府東大阪市)が共同でネイチャーギフト(京都市)を設立した。CNFをポリプロピレンやナイロンといった各種樹脂に混合したコンパウンド、MBを「京都プロセス」で量産、CNFの社会実装を目指す。

 「波動散乱の逆問題」の研究成果応用を図る神戸大学発のインテグラル・ジオメトリー・サイエンス(神戸市)も台頭。インフラの非破壊検査、乳がん検査や、リチウムイオン2次電池の電流経路を非破壊で計測する電流経路映像化システムなどがターゲットだ。これら新興企業がグローバルに躍動し、清新の気を吹き込んでほしい。

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